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時間は遡り、なのはとレザードの戦いは端から見れば拮抗していると思われる程の戦いぶりを見せていた。 だがレザードの表情には未だ余裕があり、全力を出してはいないであろうと感じるなのは。 一方でなのはは既にブラスター3を発動している状態、このまま拮抗が続けばいずれなのはが敗北するのは必死である。 しかしなのはの顔には焦りを感じている表情は無く、寧ろそれに不気味さを感じるレザードであった。 リリカルプロファイル 第三十八話 覚悟 そんな戦況の中でなのははレザードにレイジングハートを向けてディバインバスターを発射、 しかしレザードは旋回しながらこれを回避し、左人差し指を向けてライトニングボルトを放つ。 するとなのははラウンドシールドを張りこれを防ぎ、続いてアクセルシューターを撃ち放つが、 レザードはアイシクルエッジにて相殺、拮抗が徐々に破られつつあった。 すると其処に一つの影が姿を現す、その正体はフェイトであった。 フェイトはなのはが戦っているこの広場へと足早に向かっていたのだ。 「なのは!助けに来たよ!!」 「フェイトちゃん!スカリエッティは逮捕出来たの?」 なのはの質問にフェイトは口を噤み下を向いて影を潜む表情を醸し出し、その表情に困惑するなのは。 すると対峙していたレザードがその理由を語り出す、スカリエッティはもし自分が管理局に捕らわれる事になったら、 自らの意志で自らの命を絶つ覚悟を持っていたという、つまりはスカリエッティは自害したのだろうとフェイトに代わって答えた。 「そんな………何故!?」 「…それ程までに管理局が気に入らなかったのでしょう……」 肩を竦め小馬鹿にした表情を浮かべながら語るレザード、だが理由はそれだけではなかった。 逮捕されれば懲役を受ける事は明白である、だが管理局には協力を約束する変わりに懲役を減らす制度がある。 管理局は十中八九その制度を用いて交渉をしてくるだろう、スカリエッティは管理局からの脱却が目的である、 それ故に管理局に尻尾を振るぐらいならいっそ自分の手で幕を閉じると言う覚悟があったのだ。 しかしこの事を二人に話したところで理解は出来ないだろう、 レザードはスカリエッティの覚悟を胸の内にしまうと、改めて二人と対峙する。 「まぁ、いいでしょうそんな事は…今重要なのは私の邪魔をする者が増えた…という事実ですから」 「……ずいぶんと余裕ですね」 「それはそうでしょう」 女小娘が二人になったからと言って自分の方が優勢である事は変わりはしない、左手を眼鏡に当て不敵な笑みを浮かべるレザード。 その表情に不快感を現す二人であったが、寧ろ余裕のあるレザードの度肝を抜こうと考え、 フェイトはライオットザンバー・スティンガーを水平に構え、なのはもまたレイジングハートを向けて対峙する。 先ずはフェイトが先行しレザードの懐に入ると左の刀身を振り下ろすのだが、 レザードは右手に持つグングニルで受け止め、フェイトは続けて右の刀身を水平に構え突く。 だがレザードは滑るようにして後方へと回避、更に左手を向けてクロスエアレイドを放つ、 しかしクロスエアレイドはなのはのアクセルシューターによって撃ち落とされ更にレザードに向けてショートバスターを放つ。 するとレザードは急降下してショートバスターを回避し床すれすれを滑走、なのはに向けて衝撃波を放つ。 だがフェイトが間に割り込みスティンガーにて衝撃波を切り裂き、後方ではなのはがアクセルシューターを撃ち放った。 しかしレザードはリフレクトソーサリーを張りアクセルシューターを跳ね返したのだが、間髪入れずにフェイトが接近 左の刀身を左へ薙払うようにして振り抜くがレザードはグングニルにて左の刀身を受け止める。 するとフェイトは右の刀身を左の刀身に合わせ一つにし、ライオットザンバー・カラミティに変えて一気に振り切り レザードはその衝撃に耐えきれず吹き飛ばされるがすぐさま着地、するといつの間にか上空に移動していたなのはが、 レイジングハートをレザードに向けており、ディバインバスターを撃ち鳴らした。 一方レザードは依然として冷静で左手に青白い魔力をたぎらせると、直射砲のようなライトニングボルトを撃ち放ちディバインバスターと激突、 そして見る見るうちに押していく中、なのははカートリッジを一発使用、出力を上げ ライトニングボルトを押し返し始め、最終的に相殺という形で終えた。 一方でフェイトはレザードからかなり離れた後方に移動しカラミティをスティンガーに変えソニックムーブを発動、 金色の一筋と化してレザードに迫るがレザードは全方向型のバリアを張り攻撃を防ぐ。 ところがフェイトはお構いなく何度も切りかかり、まるで無限の剣閃ともいえる程の動きをしていた。 そんなフェイトの攻撃によりバリアに亀裂が走りそれを見たフェイトは更に速度を上げて攻撃、右の振り下ろしが決め手となりバリアを破壊、 するとフェイトはスティンガーをカラミティに変えてとどめとばかりに下から上へすくい上げるかのように振り上げた。 だがレザードはフェイトの攻撃のタイミングに合わせてシールドを張り攻撃を受け止め更に前宙のような動きでフェイトの頭上を舞い床に着地、 攻撃から難を逃れたかに見えたが、レザードの左上空にはなのはが陣取っており、 レイジングハートのカートリッジを三発使用、先端から環状の魔法陣が張られていた。 「ディバイン…バスタァァァ!!」 撃ち放たれたディバインバスターがレザードに迫る中、左手で大型のシールドを張り攻撃を受け止めると、 なのははカートリッジを一発使用、ディバインバスターを強化させ、更に威力が増すとシールドに亀裂が生じ始める。 その後暫くしてシールドが砕け散りレザードはディバインバスターに飲まれていった。 ところがレザードは上空へと移動しており、足下には五亡星の魔法陣が張られていた。 レザードは常に準備してある移送方陣を発動させてディバインバスターの驚異から逃れたのである。 なのはは悔しそうにレザードを睨みつけている中、レザードは驚いた様子で左手の感触を確かめていた。 先程張ったバリアに加えシールドすら破壊された…三賢人の時のように相手を油断させる為にわざと強度の低いシールドやバリアを張った訳ではない。 十分な強度で張っていたのだが彼女達は実力でバリアやシールドを破壊した、それ程までに彼女達の攻撃には威力がある… つまり彼女達は既に三賢人以上の能力を持っている事を指し示しているのであった。 「ふむ…その杖の影響とはいえ、これ程の力をつけていたとは……」 レザードは素直に二人の実力を賞賛する中、なのはの下にシャマルからの連絡が届く。 それは今し方はやてがベリオン及び動力炉を破壊したというものであった。 しかし動力炉を破壊したというのにゆりかごは依然として動いたままである、 それはゆりかごに存在する自己防衛モードによるもので、本体自体に残されている魔力によって飛行を維持されているのであった。 しかしベリオンの破壊…その内容にフェイトはスカリエッティと対峙した時の事を思い出す。 彼はベリオンとゆりかごを使ってミッドチルダを破壊するという計画があった、 だがベリオンは破壊されゆりかごも既に機能としては不完全と化している、 つまりこれはスカリエッティの計画は失敗に終わったという事を指し示しているのであった。 一方でなのは達の報告を小耳に挟んだレザードは眼鏡に手を当てていると、 不敵な笑みを浮かべたなのはがレザードを指差し声を上げた。 「ゆりかごもベリオンも無くなった!これで貴方達の計画は失敗に終わったの!!」 「失敗?まさか…確かにゆりかごは使い物にならなくなりましたが、計画そのものは支障ありませんよ……」 「どうゆう事?!」 レザードは肩を竦め小馬鹿にした表情でなのはの問いに答え始めた。 世界を崩壊などレザードが本気を出せば簡単に導く事も可能である、だがレザードはそれをしなかった。 理由はスカリエッティにあった、スカリエッティは自分の手で枷を外そうとしていた、 その気持ちをくんで敢えてレザードは前に躍り出て行動をせず、知識を与え準備を手伝うまでで止まったと、 結果スカリエッティはゆりかごを復活させ更にレザードから得た魔法技術によってユグドラシルと呼ばれる魔法陣まで造り上げたという。 「何故そこまでスカリエッティの計画に荷担するの!!」 「そうですね……興味があったから…ですかね」 そう言ってレザードは眼鏡に手を当て不敵な笑みを浮かべる、もとより深い理由など無かった、 最初に出会ったのがスカリエッティであっただけ、そして彼の計画に興味がわいた…それだけであると、 尤も今はレザード自身にも目的が生まれ、それを実行に移すには管理局という存在は邪魔であると語った。 「貴方の目的って何ですか!!」 「シンプルなものですよ…誰しもが望む事……」 しかし自分の目的は他の者達と違って管理局を敵に回す為に対峙する事となった…それだけであるという、 そしてレザードはゆっくり深呼吸をして一度上を向くと瞳を閉じて黙り、なのは達は固唾をのんでいると暫くして瞳を開き なのは達に目を向け目的を口にする。 「“愛しき者”と一緒になる…それだけですよ」 「…………………えっ?!」 レザードの目的を聞いた二人は暫く固まっていると、レザードが意気揚々に語り出す。 スカリエッティの技術とレザードが御守りとして大事にしていた神の毛によって生まれた存在チンク。 彼女は戦闘機人にしてレザードが愛する神のクローン、彼女と添い遂げる事が目的であり、 それを実行するには規制を促している管理局が邪魔な存在となる、結果スカリエッティと利害が一致した為に協力したのだと語る。 …そんなレザードの身勝手過ぎる理由に二人は睨みを利かせ激怒した。 「狂ってる……そんな理由で世界を破壊しようとしているんですか!!!」 「そうですか?私にとっては意味のある理由なのですがね……」 “愛しき者”と一緒になりたいと言う気持ちは誰しもが持っている感情、だがそれを許さずまた反対する者を裁けるだけの力があれば 誰もがそれを行うであろう…そうレザードは言葉を口にするが、なのははレザードの意見に真っ向から反対する。 なのはにも“愛しき者”がいる、だがもし彼の生まれが特殊であったとして、 自分に反対する者を裁けるだけの力を持っていたとしても行使する事は無いと語る。 「偽善…ですね……」 「そう捉えられるかもしれないけど、少なくとも貴方の意見には賛同出来無い!!」 「それは残念だ……ならば此処等で御退席して貰いましょうか」 するとレザードの足下から青白く光る五亡陣が現れ、青白く光るレザードの魔力が白く輝く魔力に変わり、 レザードの全身は光の粒子に包み込まれ、次に右手に持っていたグングニルがネクロノミコンに戻りレザードの目の前で浮かび光を放つと、 一枚一枚ページが外れ白く輝く魔力に覆われレザードの周りを交差しながら飛び回り、 そしてレザードのマントは浮遊感があるようにふわふわと漂い、レザードの体も同様に漂うと足下の魔法陣が消え去った。 モードIIIカタストロフィ、大きな破滅または悲劇的な結末と言う意味を持つこのモードは レザードが自ら掛けたリミッター全てを外し愚神の力を解放した状態である。 「まさか…ここまで魔力を強化出来るなんて……」 「……何か勘違いしているようですが…これが本来の私の力です」 レザードの放った言葉は二人を動揺させるには充分過ぎる言葉であった、今目の前で放たれている魔力は二人のようにデバイスをリミットブレイクさせた もしくは自己ブーストしたものであると思っていた、だが実際は何て事無い能力リミッターを解放させただけに過ぎないと言うのだ。 しかもレザードの話ではこの力は神から手に入れたのだという。 「そんな……貴方も神の力を手にしているなんて…」 「貴方達のような微力な力と一緒にして欲しくはありませんが……」 「なっ何ですって!!」 「何なら試してみてはどうです?」 そう言ってレザードは二人を挑発すると、二人はその挑発に乗りデバイスをレザードに向けて構え始め、 先ずはなのはがアクセルシューターを八発撃ち出し攻撃を仕掛ける、しかしレザードは舞うようにしてこれを回避、 一方でフェイトはソニックムーブを用いてレザードに接近、依然として回避しているレザードの背後を取り 手に握られたスティンガーをカラミティに変えて絶好のタイミングで振り下ろす、 だが魔力刃はレザードの体をすり抜け、すり抜けた所は光の粒子を化しており暫くして肉体に戻っていった。 「どっどうなっているの?」 「ふっ…貴方達ではこのアストラライズされた肉体を傷付ける事など出来はしないという事ですよ」 そしてレザードは右人差し指をフェイトに向けるとレザードを覆う光の粒子の一部がグングニルに変わり発射、 フェイトはカラミティの魔力刃を盾にしてグングニルを防ごうとしたが、呆気なく刃は砕け散り腹部を貫き通した。 一方でなのははレザードに向けてエクセリオンバスターを発射、放物線を描くようにしてレザードに迫っていくが、 レザードは肉体を光の粒子に変えてこれを回避、更になのはの足下を光の粒子による爆発を起こし、しかも離れた距離に移動していた。 一方で床に伏せ腹部を貫かれたフェイトは痛みに耐えていると、光の粒子の爆発に巻き込まれ高々と舞い上がるなのはを目撃、 すぐさま近づき安否を心配するとなのははゆっくりと立ち上がり、遠くでほくそ笑んでいるレザードを睨みつけた、どうやら命に別状はないようである。 「くぅ………此処まで…差があるなんて…」 「ふっ…やっと理解出来ましたか」 ほんの少し戦闘を行っただけではあるのに、レザードとの圧倒的な差を痛感する二人。 此方の攻撃は一切通用しない、魔力も身体能力も遥かに向こうが上回っている、どうあがいても“二人”では勝ち目がなかった。 ならば最後の手段を執るしかない、なのはとフェイトはお互いに見つめ合うと小さく頷き腰に添えてあった杖に手を伸ばす。 「ほぅ…まだ何かする気なのですか?」 「…私達は…諦めが悪いんだよ!」 なのはは一言口にして右手に持つ杖に魔力を、フェイトは左手に持つ杖に魔力を込める。 するとなのはの足下に赤い三角形が三つ均等に並ぶ魔法陣が、フェイトの足下にも同じ模様の青い魔法陣が張られ、 杖が力強く輝き出すとまるで祈るようにして瞳を閉じ二人同時に杖を魔法陣に突き刺す。 すると魔法陣は更に強く輝き出し光の柱となって辺りを照らし始めると、二人の頭上から 黒いローブを纏い背中にそれぞれ赤と青の計六枚を翼を生やし、頭には天使の輪がついた 流浪の双神を呼び出し光が落ち着いていくと、突き刺した杖がまるで灰のようにして跡形もなく消えていった。 一方でレザードは二人が呼び出した者が分かったらしく流石に驚きの様子を隠せずにいた。 「まさか…神を召喚するとはな……」 「ほぅ…成る程、我々の力を借りたいと言うのがよく分かる」 イセリアクイーンはレザードの肉体に宿る力を感じ、なのは達が協力を仰ぐ理由を理解する、 それほどまでにレザードの能力は常軌を逸していたのだ、そして流浪の双神は右手に杖を携えレザードに向ける。 「貴方には悪いが、これも契約なのでね…」 「神が二体…少々楽しめそうだ……」 流浪の双神を目の前にしても未だ余裕のある様子を浮かべるレザード、その反応になのはとフェイトは不安感を覚える中、 戦闘が開始され先ずはレザードが牽制としてアイシクルエッジを二人目掛けて撃ち出すが、 二人は手に持つ杖でいとも簡単に防ぎ、次にガブリエセレスタが杖を振り下ろす。 ところがレザードはグングニルを形成しガブリエの攻撃を受け止める、するとイセリアが時間差でレザードに攻撃を仕掛け 貫くようにしてレザードの腹部を狙い撃ち直撃、勢いよく吹き飛ばされるレザードであるが、 右手を向けてクールダンセルを放ち氷人形が二人の前で襲いかかる、だが二人は冷静に対処に当たり杖で氷人形を打ち砕いた。 「流石に神の前ではアストラライズは意味をなさないか……」 「当然だ、肉体を幽体にする事など造作もない」 レザードを一目見た瞬間から幽体化している事を見抜いた流浪の双神は、同じく肉体を幽体に変えて対処に当たったようであり、 これはレザードのアストラライズを無効化された事になる、だがレザードの表情には焦りの様子が無く その表情を遠くで見上げているなのは達には不安を募らせていた。 一方場所は変わり此処スバル達とチンクが戦闘を繰り広げている広場では、 スバルのナックルダスターをマテリアライズで形成した左の盾で防ぐチンクの姿があった。 「くぅ!やっぱ堅い!!」 スバルはカートリッジを一発使用してナックルダスターの威力を高めるが、一向に砕け散る様子がない盾。 一方でエリオは距離を離しストラーダを向けてカートリッジを二発使用、先端部分から魔力刃が形成されると一気に突撃、 まるで弾丸を思わせるような速度でチンクに迫っていく、一方でエリオの存在に気が付いたチンクは スバルの攻撃を流すようにして盾を傾け見事に受け流すと、その場で一回転しエリオに目を向け、 右手に携えた刀身を振り上げ魔力刃ごとエリオを高々と吹き飛ばした。 だが上空にはキャロが待機しており、フリードリヒに指示を促しエリオを回収、更にブラストレイをチンクに放つ、 ところがチンクはブラストレイを既に読んでおり既に移動して回避、カートリッジを一発使用すると脇差しのような小型の刀を二本生成、 勢い良くキャロに向かって投げつけるが、脇差しはティアナのクロスファイアによって撃ち落とされた。 するとチンクを囲うようにしてクロスファイアが六発向かってきており、チンクは盾を使って弾こうとしたところ盾は光の粒子となって消滅、 一つ舌打ちを鳴らし悔しそうな表情を浮かべるも、クロスファイアを右往左往しながら回避し更に右手に持つ刀身にて三発打ち落とした。 ところがクロスファイアは更に五発追加されて迫ってきており、チンクはまたもや一つ舌打ちを鳴らすと、 左手で床の一部を掴み取り、原子配列変換能力を用いて長刀の刀を形成し、右の刀身と左の刀によって次々にクロスファイアを撃ち落としていく。 その時である、チンクの後方からスバルが勢い良く右拳を振り上げており、拳には衝撃波が纏っていた。 「リボルバァァ!キャノン!!」 だがスバルの気配に気が付いたチンクは左の刀を盾代わりにして攻撃を受け止めると、 今度はスバルの拳のカートリッジを一発使用してスピナーを高速に回転させて衝撃波を撃ち出すリボルバーシュートを撃ち抜き、 左の刀は二つに折れ衝撃波はチンクの胸元に突き刺さり吹き飛ばされていく。 だがチンクは吹き飛ばされながらも自身のISであるランブルデトネイターを用いて刀を爆破、 スバルは爆発に巻き込まれ周囲は土煙が舞い散り、暫くして落ち着いていくと 其処には全方向型のプロテクションを張り爆発から逃れたスバルの姿があった。 「やはり…間に合っていたか」 チンクは一つ舌打ちを鳴らしスバルと対峙している中、攻撃後オプティックハイドを発動させて 姿を隠しているティアナが今までのチンクの戦闘を基に分析を行っていた。 先ずスバルから予め聞いていたチンクの能力であるが、マテリアライズは魔力を原料として生成、非破壊効果を持つが三分程度で消滅する、 一方で原子配列変換能力は物質などの媒介を魔力によって変換させる為に消滅する事は無いが非破壊効果を持たない、 しかしあの爆発能力であるランブルデトネイターにより爆弾に変える事が出来るようなのだが、 確かな威力を誇るには三分以上時間を要するようで、マテリアライズで生成した武具では時間的にも非破壊効果的にも不可能である可能性が分かった。 そしてチンクは動きを先読みすることが出来るようで、此方の攻撃や行動の先の動きを行っていた。 しかし先読み出来るのはチンクが見た対象のみ目線から離れた若しくはティアナのように隠れた対象の動きは先読み出来無いようである。 つまり背後もしくは目の届かない場所からの攻撃が有効なのであるが、 チンク自身も危機察知能力が高い為か、中々思うようにいかないのが現状である。 「でも今はこれしか打開策が無いか……」 結局のところこれ以上の有効な対策が無い為に引き続き指示を送るティアナであった。 一方でスバルと対峙しているチンクは先手を取りスバルに攻撃を仕掛ける、 だがスバルは依然として全方向型のプロテクションを張り巡らせたままでチンクの攻撃を受け続けていた。 「成る程…考えたな」 どうやらスバルに攻撃の目を向けさせる事により、他のメンバーの行動を先読みさせないよにする作戦のようである。 一方でエリオはフリードリヒの背中にてキャロからフィジカルヒールを貰い体力を回復させると、 フリードリヒから飛び降り床に着地、ストラーダをチンクに向けてカートリッジを三発使用、 メッサーアングリフを放ち見る見るうちにチンクに迫る。 「甘いな、その程度の動き先読みしなくても分かるわぁ!!」 チンクはエリオの攻撃を半歩体をずらして容易くかわし不敵な笑みを浮かべるが、 エリオは急速停止し左足を滑らすようにして反転、左の裏拳による紫電一閃を打ち抜こうとした。 ところがチンクは腰を素早く下ろし裏拳を回避、更にスライディングキックにてエリオを迎撃、 するとエリオの攻撃に続けとばかりにスバルが飛び出し、右手にはスピナーの回転により螺旋状と化した振動エネルギーを纏っていた。 振動拳と呼ばれるスバルのISである振動破砕を用い、持てる技術を尽くし完成させた必殺の一撃である。 一方でスバルの拳を目撃したチンクは危機感を感じマテリアライズにて大型の盾を生成し備えた。 そして激突、辺りには振動拳の衝撃が伝わり床を削るようにして破壊、チンクもまた盾とともに床を削りながら吹き飛んでいく。 だが盾を破壊する事は出来ず盾が消滅すると無傷のチンクが顔を覗かせていた。 「これでも…駄目なのか……」 スバルは絶望の淵に追いやられたかのような表情を浮かべている中でチンクに異変が訪れる。 それはチンクの表情が痛みに耐えているような顔つきで更に左膝をついたのだ。 今までとは異なる反応にティアナは一つ確信する、マテリアライズされた武具は破壊する事は出来ない、 だが武具に受けた衝撃全てを受け止められる訳ではない、本来であれば破壊される程の衝撃を受ければ その衝撃は武具を通し本人に伝わり、そのままダメージを負うという事であると。 つまりは強烈な攻撃であればたとえマテリアライズされた武具でもダメージを与える事が出来る訳である。 そしてチンクを撃破するに当たって一番要なのが一撃の威力に定評があるスバルであった。 一方でチンクは自分が受けたダメージが思っていた以上である事に驚きを感じ、またスバルに警戒を浮かべていた。 これ以上攻撃を受ければ敗北するのは必死、憂いは経たなければならない…そう考えたチンクは真っ先にスバルを始末する事に決めた。 「貴様から先に叩いてくれる!!」 「そうはさせない!!!」 するとエクストラモードを起動させたエリオが割って入り、左拳に雷を纏わせ自身最速のソニックムーブにてチンクの懐に入る。 一方でチンクはエリオの行動を先読みし、攻撃を避けられないと悟るや否やマテリアライズにて大型の盾を形成した。 しかしエリオはお構いなく盾の上から何度も紫電一閃を連打しチンクを釘付けにする、 そして更にカートリッジを全て使用して右手に持つ小型化したストラーダに魔力を込め何度も盾を突き刺した。 「奥義エターナル!!レイド!!!」 最後に魔力と雷を込めた突きが盾に響き、その衝撃により盾ごと吹き飛ばされるチンク しかしエリオの攻撃を防ぎきったチンクは反撃を行おうと睨みつけるとエリオが声を荒らげた。 「今です!ティアナさん!キャロ!!」 チンクは辺りを見渡すと右上空にはエクストラモードを起動させ、フリードリヒの胸元に存在する竜紅玉に魔力を溜め込みいつでも撃てる用意があるキャロと、 少し離れた左側にエクストラモードを起動させクロスミラージュを水平に構え、その中心を軸に巨大なエーテルの球を作り出し、いつでも放てる用意があるティアナがそこにいた。 どうやら二人はエリオの攻撃の最中に準備を始め、エリオの攻撃が終わる頃を見計らって攻撃出来るように準備を整えたようである。 『奥義!!』 「ドラゴンドレッド!!」 「エーテルストラァァァイク!!」 エリオの合図の下、間髪入れず撃ち放たれた二つの強力な一撃がチンクに迫る中で、 もう一度マテリアライズを行い、同じ大きさの盾を用意して防御に当たるチンク。 そして激突と同時に大爆発を起こし、辺りには衝撃波が走り巨大な土煙がチンクを覆い隠す中 土煙が落ち着き始めると其処には巨大な盾に身を守られていたチンクの姿があった。 「そんな…効いてないの?」 「………いや!効いてる!!」 盾が光の粒子となって消滅した瞬間、チンクは左膝をつき表情に曇りの色を見せ、ティアナは最後であるスバルに目を向け指示を送る。 だがその一方でチンクの足下には多角形の魔法陣を幾重にも張り巡らせており、何処からともなく声が聞こえ始めた。 「汝…其の諷意なる封印の中で安息を得るだろう…永遠に儚く……」 「いけない!広域攻撃――」 「セレスティアル!スタァァァ!!」 チンクを中心に輝く羽が舞う複数の光の柱が立ち上り、更に広がっていくとティアナ・エリオ・キャロそしてスバルを飲み込んでいく。 そして辺りは光に包まれ暫くして光が落ち着いていくと其処には床に這い蹲ったエリオ・キャロ・ティアナの姿があった。 だがその中で全方向型のプロテクションを張っていたスバルだけがチンクの攻撃耐え抜いた姿があり、 スバルの姿を見たチンクはカートリッジを全て使用、足下に白い五亡星の魔法陣を張り 全身を白く輝くまるで白金を思わせる魔力で包み込むと、半身を開き構え素早くスバルの懐に入る。 そして矢のようなスライディングで足下を攻撃し後ろを取った瞬間に振り下ろし、間髪入れず振り上げスバルの体を浮かせる。 更に右からの袈裟切り、左からの払い、そして下から切り上げ更にスバルの体を宙に浮かせると、 巨大な槍が三本スバルの左右の脇腹から肩にかけて、脊髄から腹部にかけて突き刺す。 そして剣を納めスバルの頭上まで飛び上がると背中から光の翼を生やし、翼が光の粒子となって右手に集うと巨大な槍に変化した。 「これで終わりだ!奥義!!ニーベルンヴァレスティ!!!」 そう叫ぶと槍は白く輝く鳥に変わりスバルを貫く、そして白色の閃光は大きな粒上に変化 スバルを中心に集い圧縮され暫くして大爆発、辺りには爆音と共に衝撃波が響き渡り土煙が覆われていた。 「す………スバルゥゥゥゥゥゥ!!!」 ティアナの悲痛な叫びが辺りに響き渡る中でチンクは静かに着地、だが連続のマテリアライズに広域攻撃魔法、 更にはカートリッジ全てを使用したニーベルンヴァレスティと魔力を大量に消費した為、 かなりの負荷が体にのしかかったらしく左膝をついて肩で息をしていた、だが憂いでもあったスバルは倒れ他の仲間も床に伏している、 チンクは勝利を確信した表情で顔を上げると、土煙の中から腕をクロスに構え、チンクの攻撃に耐え抜いたスバルの姿があった。 「ばっバカな!!私の最大の奥義を耐え抜いたというのか!?」 「次は……コッチの番だぁぁぁ!!!」 スバルは両拳を握り締め足を肩幅まで開き構えると両腕のカートリッジを全て使用、大量の赤い魔力が炎のように溢れ出し 両拳には螺旋状と化した振動エネルギーを纏い、両足には赤い翼のA.C.Sドライバーが起動していた。 そして一気に加速し一瞬にしてチンクの懐に入るや否や、右のナックルダスターがチンクの胸元に突き刺さり、 続いて両拳からの上下のコンビネーションであるストームトゥースにマッハキャリバーとの息のあった拳と蹴りのコンビネーション、キャリバーショット そして左のナックルバンカーがチンクの顎を捉え跳ね上げると、右のリボルバーキャノンが腹部に突き刺さってめり込み 更にスピナーの衝撃を放つリボルバーシュートにてチンクを高々と舞い上がらせる。 すると今度はウィングロードを伸ばして滑走、チンクに追い付くと環状の魔法陣が二つ張られ 加速された赤い魔力球が握られた右拳をチンク目掛けて振り下ろした。 「奥義!ブラッディィ!カリスッ!!!」 振り下ろされた右拳はチンクの腹部に突き刺さり九の字に曲げると、そのまま垂直落下とも言える角度のウィングロードを滑走、 床に大激突し辺りに激しい衝撃が走る中でその中央ではスバルの拳をきっかけに、赤い魔力と混ざった振動エネルギーが波のように溢れ出しチンクの身を何度も叩きつけ 甲冑や兜は砕け散りスカートはボロボロ、そして左耳に取り付けてあったデバイスは砕け散ったのであった。 母のシューティングアーツに機動六課での特訓、リボルバーナックルの性能にエクストラモードの能力、 更にはスバルの今までの戦闘経験やセンス最後にISによって完成されたブラッディカリスはまさに一撃必倒と呼べる威力を誇っていた。 そして放たれた赤い魔力が落ち着くと其処には眼帯を失い、至る所が切れてボロボロの戦闘スーツ姿に戻ったチンクが仰向けの状態で倒れており、 チンクの姿を見たスバルは勝利を確信したと同時に両膝を付き肩で息をしていた。 するとスバルの勝利を祝ってかティアナ達が集まり激励を送るのであった。 時はチンクが撃破される前まで遡り、イセリアは女王乱舞にてレザードを攻撃、 だがレザードはシールドを張って攻撃を全て防ぎその中で詠唱を始め、ファイナルチェリオをイセリアに向けて反撃した。 だが一方でガブリエが接近し右手に持つ杖を振り下ろすがレザードはグングニルで防ぎ難を逃れる、 その間に攻撃に耐えたイセリアが背後を取り杖を振り抜きレザードを吹き飛ばすが、 レザードは右手を向けて直射型のライトニングボルトを放ち、イセリアはシールドを張ってこれに対抗した。 一方なのは達はレザードと流浪の双神の熾烈な戦いに唖然とした表情を浮かべていた。 するとなのはの下へティアナからの連絡が届く、それは今し方スバルがチンクを倒したという内容であった。 一方なのはの報告に小耳に挟んだレザードは動きを止め驚愕な表情を浮かべすぐさまモニターを開くと、 其処には仰向けで倒れているチンクの姿が映し出されていた。 「バカな…私の“レナス”が………」 レザードは頭を押さえ、まるでこのような結末を望んでいなかったと思わす表情を浮かべ、うなだれていた、 一方でなのは達は勝利を確信した表情を浮かべていた、戦況はこちらが優勢 しかもフェイトから聞いていた計画の要でもあったチンクは此方の手中にある、そして他のメンバーも此方に集うであろう。 そして流浪の双神も存在する、もはやレザードは袋の鼠状態、これ以上の抵抗は無意味であるとなのはが伝える中、 微動だにせず依然として俯き頭を手で押さえ、うなだれてるレザードの姿にフェイトが声を荒らげる。 「何か言ったらどうです!!」 「…………………」 しかしレザードは答えず長い沈黙が続き動きが一切無い中、レザードの体から金色の砂のような物が次々に垂れ出し、 それは床に落ちて徐々に広がり部屋全体を覆い輝かせる。 「なにこれ?!」 「術式………かな?」 それはよく見ると文字のようで部屋全体に書かれたのだろうと言うのがフェイトの見解である、 すると今まで沈黙していたレザードが静かに言葉を口にし始める。 「…たかが一介の魔導師が私の計画を潰し、あまつさえ我が“愛しき者”を傷付けるとは……」 次の瞬間なのは達の体に異変が起きる、それは今までとは異なり体に負荷がのしかかり、 それはまるで能力リミッターを掛けられた時と同じような感覚を覚えていた。 なのは達は自分の体の異変に戸惑っていると、レザードが振り返り押さえていた手を降ろしその表情は怒りに満ち鬼の形相と化していた。 「――許せん!!!」 自らのお気に入りであり“愛しき者”であるチンクを傷付けた罪は重い、そう口にすると左手を掲げるレザード そして――― 「跪け!!」 左手を振り下ろした瞬間、何かがのし掛かったかのように全身が重くなりなのは達は床に伏し、その光景はまさに跪いているかのようであった。 その中でイセリアがゆっくりと立ち上がりレザードに向けて杖を振り払い衝撃波を生み出す。 だがレザードは迫ってくる衝撃波をまるで埃でも払うかのようにして右手を払いかき消した。 「どっどうなってるの?!」 「なる程な……」 なのはは戸惑う中イセリアが説明を始める、レザードの体から放たれたこの術式により 肉体・魔力更には攻撃の威力まで十分の一以下にまで押さえつけられているのであろうと語る。 一方でレザードは再び左手を掲げなのは達を浮かばせると左右の壁、上下の床や天井に次々にぶつけ更に叩き落ととすようにして床に激突させた。 「殺しはしない!死んで楽になどさせるものか!!」 すると今度は大量のイグニートジャベリンを用意して一斉に発射、なのは達の身を次々と貫いていく、 だがレザードの攻撃は終わらず続いてダークセイヴァー、アイシクルエッジ、プリズミックミサイルなどを次々撃ち抜き 必死の形相で回避またはバリアやシールドなどで防ごうとした、しかしレザードの放った魔法の威力はそれらを簡単に打ち砕きその身に浴び次々に倒れていくなのは達。 そして最後にレザードは詠唱を破棄してファイナルチェリオを撃ち放ち、その衝撃により床壁などを吹き飛ばした。 「どうしましたぁ!?この程度で終わりですかぁ!?」 レザードは尚も挑発を促しなのは達を立たせていく中、なのは達の表情は絶望に支配されていた。 此方に攻撃を仕掛ける暇も与えず、もし攻撃出来たとしても大したダメージを与える事が出来無い、 更には流浪の双神すら手玉に取られている状況、正に今のレザードは“破壊を求める者”といっても過言ではなかった。 そんな状況になのはとフェイトは塞ぎ込んでいると二人の下へ流浪の双神が駆け寄り二人に話しかけた。 「一つだけ…奴に対抗出来る手段がある……」 「えっ?それは一体?!」 「私達との融合…ユニゾンと置き換えてもいい」 二人のどちらが流浪の双神と融合する事により一時的にレザードと対等の力を得ることが出来るという、 だが神とのユニゾンは大きなリスクを伴い、下手をすれば器となった存在の魂が消滅する可能性を秘めていた。 つまりレザードとの実力差を埋めるにはそれ程までのリスクを背負わなければならないと言う事である。 すると神の話を聞いたなのはが覚悟を秘めた表情を浮かべ言葉を口にし始める。 「だったら私が―――」 「私を器にして下さい!!」 「―――フェイトちゃん?!」 なのはの決意を遮るかのようにフェイトは言葉を口にし困惑するなのは。 するとフェイトが説明を始める、なのはにはユーノやヴィヴィオなど大切な人がいる、その人達を泣かせる訳にはいかない、 だからなのはの代わりに自分が器になると告げるとなのはは反発した。 「何言ってるの!フェイトちゃんにもエリオやキャロが―――」 「二人なら私がいなくても大丈夫だから」 先だってのスカリエッティとの戦いで見せた二人の決意、それを耳にしたフェイトは二人が自分の下を巣立ったのだと確信した それになのはは自分の命を救ってくれた、その恩を返す為にも今ここで自分が器になる、そう覚悟を決めたのだという。 「なのは……みんなの事をお願―――」 次の瞬間なのははフェイトに当て身し気絶させると、悲しい表情でフェイトを見つめるなのは。 いくらフェイトの願いであってもそれを受け取ることは出来なかった、何故ならレザードとは自分の手で決着をつけたかったからだ。 ホテル・アグスタを始め地上本部での二度の敗北、そしてヴィヴィオを誘拐され絶望の淵に追いやられた。 それらを払拭する為にも自分の手で行わなければならないと覚悟を決めていたのだ。 「……良いのだな?」 「覚悟はもう…決まってるの!」 なのはの決意ある瞳を見た流浪の双神は小さく頷き、気絶するフェイトから離れ三人はレザードに近づくと、今度は流浪の双神がなのはとある程度距離を置く、 そして足下に巨大な三角形が三つ均等に並ぶ魔法陣を張り巡らせると、今まで沈黙を守っていたレザードが見下ろす形で言葉を口にする。 「まだ悪足掻きをするつもりですか?」 「言ったの…私は諦めが悪いって!!」 するとなのは足下に流浪の双神と同じ桜色の魔法陣が張られ輝き始めると、それに呼応するように流浪の双神の魔法陣も力強く輝き出す、 そしてその輝きは一種の壁となり三人は声を合わせて言葉を口にした。 『ユニゾンイン!!』 「何ぃ?!」 流石のレザードも驚きの表情を浮かべていると、流浪の双神はそれぞれ赤と青のエネルギー体になり更に球体に変化、 魔法陣ごとなのはに近付き胸元に吸い込まれていくようにして収まると、次の瞬間大量の桜色の魔力が天井を突き破るかのようにして溢れ出し魔力がゆっくり収まっていく。 其処には背中に桜色の六枚の翼を生やし胸元の黒い部分は透けて谷間が強調されたロングスカート型のバリアジャケット 足下は金で装飾された金属製のハイヒール型の具足に変わり外側の両足首部分からは桜色の翼が生え、 結っていたリボンが無くなり髪型はストレートヘアー、更に桜色の天使の輪が浮かんでいた。 そしてレイジングハートは力強くまるで冷え切っていない溶岩のように赤いクリスタルが輝き、 ストライクフレームから現れる魔力刃は鋭く分厚く左右からは四枚の小さな翼が生えていた。 なのはの変貌にレザードは依然として唖然した表情を隠せないでいると、 今まで瞳を閉じていたなのはの瞳が開き、金色に輝くその瞳でレザードを突き刺すように睨みつけた。 「覚悟っ!!」 「一介の小娘が神とユニゾンだと……いいだろう相手をしてやろう!!」 するとレザードは、まるで北極星を思わせるようにして力強く輝き白金のような色と化した魔力を高めていき、 一方でなのはは自分の体を確かめるかのようにして体を動かし、レイジングハートの先端をレザードに向けて対峙する。 いよいよ戦況は最終局面を迎えるのであった……… 前へ 目次へ 次へ
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タカヤはどこかベッドの上で目を覚ました。 見慣れない場所。だが恐らくどこかの病院だろう。 まさかまだこれほどの設備が揃った病院があったとは、タカヤにとっても軽い驚きだった。 ん?ちょっと待てよ……「これほどの設備が揃った」? どういうことだ?いや、それよりも…… 「ここは?……俺は……誰だ……?」 タカヤは起き上がり、一人呟く。確か……自分は…… 過去の記憶を少しずつ思い出していく。 木星へと旅だったアルゴス号の中、ラダムのテックシステムに自分の家族達が取り込まれる。 父は最後の力を振り絞り、自分を助け、そして自分は『テッカマンブレード』となり地球に降り立った。 そして取り込まれた家族や友人達はラダムの『テッカマン』として肉体を改造され…… 「……ラダムッ!」 思い出せば思い出す程憎悪が込み上げてきた。タカヤは憎き敵の名を呟き、拳をにぎりしめる。 そうしていると、この病室のドアが開き、二人の子供が入って来た。一人は金髪で髪をツインテールにした少女。 もう一人は黒髪で、少女よりも少し大人びた雰囲気の少年だ。 「あ……もう、大丈夫?。」と、金髪の少女が話し掛けてくる。 「……お前らは?」 「それはこっちの台詞だ。キミこそ何者なんだ?」 タカヤは二人に質問するが、逆に少年に聞き返されてしまう。 「……わからない……。」 「何?」 「何も思い出せない。俺が誰なのか……」 タカヤは少年に記憶喪失だと偽る。いや、本当は覚えているが、言いたくないのだ…… 「え……つまり、記憶喪失って事?」 「……そうみたいだな。」 少年は「はぁ」とため息をつきながら言った。 第1話「天駆ける超人」 アースラ、艦長室。 「私が艦長のリンディ・ハラオウンです。あなたは……記憶喪失なんですって?」 「……ああ。」 「そう……。ではあなたが何故ここにいるのか、その経緯もわからないかしら?」 「気付いたらここにいた。」 「……そう。」 リンディは何を聞いても「わからない」の一点張りのタカヤにため息をつく。 「じゃあ……これに見覚えはあるかしら?」 「これは……」 そう言いリンディが差し出したのは、緑のクリスタルのようなもの。 これはテッカマンに変身するために必要なシステムボックス。タカヤはそれを受け取り、眺める。 「悪いけど、このクリスタル、私達で調べさせてもらったわ。」 「何?」 「これはデバイスに近いみたいだけど、どうにも構造がわからない謎の物質みたいなの。これもわからないかしら?」 「……。」 タカヤはデバイスという単語が気になったが、余計な事は言わない方がいいと判断した。 「……まぁ、一応あなたのモノっぽいからあなたが持ってるといいわ」 リンディはクリスタルを見ながらそう言う。……まぁ、もし返してくれなければ奪うつもりだったが…… 「で、あなたの体についても色々と気になる点があるの。」 「…………。」 「……って言っても、記憶が無いあなたに言ってもわからないわよね……。」 そう言いこれ以上の言及を諦めるリンディ。タカヤはテッカマンだ。普通の人間と違っていてもそれほど驚くことはないだろう。 「……俺は……何故ここにいる?それにお前らは何者だ?」と、今度はタカヤが質問する。 「私達は時空管理局という組織の者です。あなたがここにいる理由ですが……」 その後タカヤは長々と訳のわからない話を聞かされた。どうやらどこかの次元世界で、次元振とやらが発生し、そこでタカヤは倒れていたらしい。 そしてタカヤの周囲にはその世界のモンスターの死体が転がっていたという。 それから一番信じがたいのが、魔法やデバイス、魔導師といったファンタジー系の話だ。 とりあえず、記憶が戻るまではこの時空管理局がタカヤの面倒を見てくれるらしい。 数分後、アースラ食堂。 ようやくリンディから開放されたタカヤは食堂に向かった。 そこには、さっきの子供二人と、大人っぽい女性が二人いる。 「私はフェイト・テスタロッサっていいます。」 「あたしはアルフ。フェイトの使い魔だよ。」 「僕は執務官のクロノ・ハラオウンだ。」 「で、私がオペレーターのエイミィ!よろしくね」 それぞれが自己紹介をしてくる。皆はタカヤに名前を聞きたがっているようだが、記憶喪失の男に聞いてもわからないだろうと、名前を聞きづらいようだ。 「あの……私達はあなたの事、なんて呼べばいいかな?」 フェイトが困った顔で質問する。 「……何でもいい。」 「じゃあ、Dボゥイってのはどうかな?」 「「Dボゥイ?」」 エイミィが「ひらめいた!」という表情でタカヤに言う。その場の皆も「は?」という顔をしている。 「うん♪デンジャラスボゥイの略だよ。一人であの化物達を全滅させちゃったみたいだし。なんか危険な雰囲気だし」 エイミィは笑いながら言う。特に他意は無い無邪気な表情だ ちなみに化物とはさっきリンディが言っていたモンスターと見て間違いないだろう。 「エイミィ……もうちょっとマシなのを……」 「いや……それでいい。」 「え?」 クロノがエイミィに突っ込もうとした時、タカヤ……いや、Dボゥイが割り込んだ。 「Dボゥイでいい。」 「「…………。」」 こうしてタカヤはDボゥイと呼ばれる事となった。これが、この世界でのDボゥイ誕生の瞬間である。 海鳴市、図書館。 八神はやてが車椅子に座ったまま少し高い場所にある本へと手を延ばす。 だが微妙に届かずに困っていた所、一人の少女が変わりに本を取ってくれた。 「これですか?」 「はい。ありがとうございます」 はやての顔が「ぱぁっ」と明るくなる。そして紫の髪をした少女にお礼を言う。 「実は時々見かけてたの。あ、同じくらいの年頃の子がいるなって」 「あ、実はうちもそうなんよ。」 二人は図書館の椅子に座り、話を始めた。同じくらいの年頃の女の子だから、という理由で意気投合したのだ。 「あ、私は月村すずか」 「うちは八神はやて。ひらがなではやて。変な名前やろ?」 お互いに自己紹介する。はやては少し笑いながらそんな質問をする。 「ううん!とってもきれいな名前だよ!」 すずかは自虐的なはやてを弁護する。本当にきれいな名前だと思ったのだ。 しばらくたって、すずかがはやての車椅子を押しながら出口へ向かうと、金髪の女性-シャマル-がおじぎをしてくる。 「もうここまででええよ」 「うん、じゃあ私はこれで」 はやてがすずかに言い、すずかもシャマルがいるからここからはついていかなくて大丈夫だろうと判断し、その場から立ち去った。 今度はシャマルがはやての車椅子を押して歩く。 「寒くないですか?」などと他愛もない話をしながら図書館を出ると、今度はピンクの髪をポニーテールにした女性-シグナム-がいた。 「シグナム!」 「はい。」 シグナム、シャマル、はやての三人は家に向かって歩き出す。 晩御飯の話や、材料の話など、いろいろな話をしながら。 「そういえば、ヴィータは今日もどっか行っとるん?」 「……。」 はやての言葉に少し困惑した顔をするシャマル。そこでシグナムが、「ヴィータは毎日遊び歩いてるから」と言い、なんとかごまかす。 「まぁザフィーラもついてるし、大丈夫でしょう。」 「そぅやなぁ。そういえば、シンヤはどないしたんやろ?最近夜まで帰ってこぉへん事よくあるけど……」 はやての言葉に今度はシグナムもシャマルも「うっ!」という顔をする。 「シ……シンヤ君も、年頃の男の子だし、色々あるのよ……ね、シグナム?」 「ん?……ああ。だがあまり主に心配をかけさせるものでは無い。今度私から言っておこう。」 「うん。お願いするわぁ、シグナム。」 シャマルとシグナムはなんとかこれもごまかすことに成功する。 「(まったく……主に心配をかけさせるなとあれほど言ったのに……)」 「(まぁまぁシグナム。シンヤ君のおかげでページの収集量が著しくアップしたんだから)」 「(まぁ……それはそうだが……)」 これはシグナムとシャマルの念話だ。はやてに聞かれる訳にはいかない会話等は念話で行われることが多い。 海鳴市、オフィス街。 「ぐぁあああ!」 路地裏から聞こえる叫び声。赤い装甲に身を包み、片手にランサー状の武器を携えた戦士-いや、悪魔といった方が相応しいか-『テッカマンエビル』と、それに倒された時空管理局員2名だ。 「フン……つまらないね。お前達なんか倒しても大した足しにはならないけど……」 エビルはそう言いつつも闇の書を開き、二人の局員から魔力の源である『リンカーコア』を抜き取り、闇の書の餌として与える。 そしてリンカーコアを抜き取られた局員達の悲痛な叫び声が再び夜の街にこだまする……。 「どこだ……?」 ヴィータはザフィーラと共に空中で強い魔力の持ち主を探していた。 最近ちょくちょく現れる強力な魔力の反応。あれを倒せば闇の書も一気に20Pは増えるだろう。 そこでザフィーラが「二手にわかれよう。」と提案する。 ヴィータはその提案に乗り、真っ直ぐに飛んでいく。 『対象、接近中』 しばらく飛んでいると、グラーフアイゼンの機械音が聞こえる。対象が近くにいると言うのだ。 一方、アースラ。 「艦長!海鳴市で空間結界が観測されました!」 「何ですって!?」 「……さっきから海鳴市がモニターに写らないんです!」 エイミィがリンディにそう報告し、ブリッジに複数のモニターが展開される。どれに写る映像も砂嵐だ。 「なのはさんは?」 「それもだめです!さっきからやってるけど、なのはちゃんとも連絡とれません!」 「そんな……。」 リンディは考え込む。今、アースラスタッフは別件で出払っているため、出動できる者はいない。 ならクロノやフェイト達は?これも無理だ。彼らは今、PT事件の裁判で判決待ちなのだ。 本局から局員を回してもらおうにも時間が掛かりすぎる。 リンディは「…………」と考え込み、万策尽きたかと思われた、その時…… 「俺が行こう……!」 ブリッジのドアの方向から声が聞こえる。 「「Dボゥイ!?」」 どうやらブリッジまで走ってきたのか、少し息切れしている。 クロノ達は前述の通り判決待ちだから、Dボゥイはアースラ個室で待機していたはず。突然の出現にエイミィもリンディも驚いている。 「……却下します。民間人であるあなたにそんな無茶はさせられません」 だがリンディはすぐに却下する。 「そんな事を言ってる場合ではないだろう。今あそこに向かえるのは俺だけだ……!」 「でも、Dボゥイ……あなた魔法は?」 今度はエイミィがDボゥイに質問する。確かにデバイスらしき物は持っているが、それはデバイスでは無い。 その体からは魔力らしきものも確認されたが、それも魔力とは違う何かだ。 「魔法など必要無い。」 「そんな無茶な……」 「それなら尚更行かせる訳にはいきません!」 リンディはさらにきつく言う。 「……頼む、行かせてくれ!俺は行かねばならないんだ!」 今度は真剣な面持ちでリンディに頼み込むDボゥイ。ここまでしなくともDボゥイならこんな戦艦一隻くらい破壊して脱出することもできる。 だがそれでは駄目だ。何故ならここは異空間だからだ。脱出したところで現場に向かえなければ意味が無い。 「……頼む!」 「……敵が魔導士でも……勝てる見込みがあるの?」 「ああ。俺は死なない!」 リンディはそこまで言うならとDボゥイに逆に質問する。 「はぁ……わかりました。そこまで言うからには、何かあるんでしょうね。」 Dボゥイの自信に満ち溢れた表情を見ると、何故か信じてみたくなった。リンディはため息をつきながらもDボゥイの出撃を許可する。 「……感謝する!」 「頑張ってね、Dボゥイ!」 エイミィもDボゥイに激励の言葉をかける。 Dボゥイは一瞬エイミィを見た後、転送ポートへと走る。その時、エイミィの目に写ったDボゥイの顔は、とても死ににいく男の顔には見えなかった。 「……ラダムッ!」 Dボゥイは転送ポートに入り、そう呟く。ラダム同士はお互いに引き合う性質を持っている。 海鳴市から感じる波動はまさしくラダムのものだ。 「(……ラダム!貴様らは俺が一匹残らず倒す!)」 Dボゥイはそう強く念じた……。 高町なのはは何者かが展開した結界と、こちらに向かってくる魔力に対抗するため、家を出てとあるビルの屋上に立っていた。 『来ます。』 レイジングハートの声。なのはは魔力が向かってくる方向を睨む。すると何かが高速でこちらに向かってくる。 『誘導弾(ホーミングボール)です』 「!?」 なのはは飛んできた誘導弾を防ぐために障壁『ラウンドシールド』を使う。 誘導弾一発なら、ラウンドシールドでふせげるだろう。そう思っていた。 だが誘導弾は予想以上の威力で、凄まじい衝撃がなのはに伝わる。 そして…… 「テートリヒ……シュラークッ!!」 誘導弾の方向から赤いバリアジャケットを身に纏った少女が飛んできた。 振り下ろされるハンマー、グラーフアイゼンを受けるために今度は右手でラウンドシールドを展開した。 「……っ!?」 だがこれも想定以上の威力。 なのはは吹っ飛ばされ、そのままビルから落下する。 「レイジングハート、お願い!」 『Standby ready』 なのはの掛け声に首にかけられたレイジングハートが呼応する。 そしてなのはの姿は変わっていく…… 「……この波動はまさか……ブレードか?」 エビルはこちらに向かってくる波動にテッカマンの力を感じた。 そのテッカマンが兄、タカヤことブレードである確証などどこにもない。だが本能がそう告げているのだ。 ブレードが来た、と。 「フフフ……そうか。やっと兄さんも来たんだね……。」 エビルはそう言い、「フフフ」と笑い始める。 「……クックック……アッハッハッハ!!今会いに行くよ、兄さんっ!!」 エビルはついには大声で笑いだし、ブレードが現れると思われる方向に向かって一気に加速する。 「いきなり襲い掛かられる覚えは無いんだけど!」 そう言いアクセルシューターでヴィータを追い詰めるなのは。まぁ、全て回避されているが。 「話を、聞いて!」 『divine buster』 なのはの言葉に聞く耳を持たないヴィータに対し、今度はディバインバスターを放つ。 放たれた桜色の光はヴィータをかすり、ヴィータの帽子を飛ばす。 そして飛んでいく帽子を見て、ヴィータの目付きが変わった。簡単に言うと、キレた時の目付きだ。 「……こンのやろぉー!!」 グラーフアイゼンを変型させ、カートリッジをロードさせる。 「ラケーテン……!」 ヴィータは変型したグラーフアイゼンを手に回転を始め…… 「ハンマァー!!」 一気になのはに飛びかかる。 なのははラケーテンハンマーをラウンドシールドで受けるが、凄まじい威力に障壁を破壊されてしまう。さらには障壁を貫き減り込んだグラーフアイゼンがなのはのバリアジャケットにヒットする。 「きゃぁぁぁぁああああ!」 なのははそのまま吹っ飛ばされ、ビルの窓ガラスを破り、倒れ込む。 ヴィータはゆっくりと床に転がるなのはを追い詰める。 一方なのはは障壁を破られた上にバリアジャケットの装甲まで貫通され、魔力も大幅に削られているため立ち上がることすらままならない状態だ。 ヴィータはグラーフアイゼンを構えゆっくりと歩いてくる。それに対抗し、震えた手でチカチカと点滅するレイジングハートをヴィータに向ける。 「(こんなので……終わり……?)」 なのははぼやける視界に映るヴィータを見ながら思った。 そしてなのはの目に映るのはグラーフアイゼンを振り上げるヴィータの姿。 「(嫌だよ……ユーノ君……クロノ君……フェイトちゃん……!)」 なのはがヴィータの攻撃に目をつむろうとしたその時- 「テックランサァーーーッ!!!」 遠くから聞こえる叫び声。 「!?」 「なんだ!?」 なのはとヴィータは声の方向を向く。ヴィータにとっては背後だ。 その方向から物凄い速度で何かが飛んでくる。 それもそのはずだろう。テッカマンは超音速を越えた速度で空を駆け、核兵器にも耐え得る体を持った超人なのだから。 そしてヴィータはそれを知っていた。 「なっ!まさか……!白いテッカマン!?」 「う……テッカ……マン?」 なのははヴィータが言う『テッカマン』という言葉に反応する。聞き慣れない言葉だ。 そして次の瞬間には白いテッカマンはヴィータの眼前にいた。手に持つランサー状の武器、『テックランサー』をヴィータへと構えて。 「(……白い……魔神……)」 なのははその白と赤の装甲を身に纏った戦士を見てそう思った。 白き魔神、テッカマンブレードの復活である。 「白いテッカマン……何者だ、テメェ?」 「…………。」 ヴィータはテックランサーを突き付けられながらもブレードを睨み付ける。 そしてその直後、なのはの周囲に魔法陣が現れる。 「なのは……遅れてごめん。」 現れたのはユーノとフェイトだ。ユーノはなのはの後ろでなのはに右手をかざしている。 「ユーノ君……フェイトちゃん……」 一方、フェイトはバルディッシュをヴィータに向けている。 「なんだテメェらは……こいつの仲間か?」 『サイズフォーム』 フェイトはバルディッシュをサイズフォームへと変型させる。「ガシャン」と音をたて、魔力の刃が鎌の形を形成する。 「……友達だ。」 フェイトはマントを翻し、バルディッシュを構える。 前へ 目次へ 次へ
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「ケロ……あのー我輩のこと見えているでありますか?」 場をごまかすかのように作り笑いを浮かべ、ケロロが男性に尋ねると男性は「ああ。」と首を縦に動かす。 やべー。現地生命体に見つかっちゃったー。 顔から汗が吹き出し、精神が張り詰めてくる。 どうやってこの現地生命体から姿を消すか……。アンチバリアの存在をど忘れし、脱出の名案を出そうと考察し始めた。 が……よく、辺りを見回すと研究室と思わしき広い空間。 その空間の壁に立つ柱。 そして、生命体が手元の寝台で寝かせている誰かの身体を見てケロロは思考が停止した。 誰かは裸で……胸が膨らんでいていて身体も幼かった。そのことから女性だと認識する。 が、問題はそこではなかった。 女性の身体の一部がメスで開かれて機械が剥き出しているのだった。 「……どうした?」 カエルと思える物体が固まっているのを察し、男性は妖しく眼を細めて尋ねる。 しゃべるということは、このカエルは誰かの使い魔か……。 と考察し、男性は始末してしまおうと判断した時。 「わー、すっげー!改造人間じゃんカッコイイー!」 「へ?」 第1話「ケロロ、めぐりあい研究施設。であります!」 新しく現れたテレビのヒーローを見ているかのような興奮した声に男性は邪念が霧散してしまう。 意外な言葉をもらい、反復しながら眼の前のカエルを見遣る。 カッコイイ? 確かに自分の中の最高の技術で生み出したこの戦闘機人に愛を注いでいるが、他人からそう言われたことなど今までになかった。 その為、男性は嬉しさで気分が高揚していたことを自覚した。 褒められて……うれしいのか。私は……。 「カッコ……イイかい?」 「左舷、何をバカなこと言ってんの!? こんな『出たなショッカー!』みたいなのとか『キカイダー!!』みたいなヒーロー、ヒロインほど男の心を擽るものはないであります。これは造ったのでありますか?」 「ああ、戦闘機人と言ってね。この娘だけじゃなく。あっちのカプセルに入った娘もね。」 柱のように立ち並ぶカプセルの中を男性が促して示すとカエルはらんらんと輝きを放って中に浸かっている少女達を見回して叫ぶ。 「ゲロー!なんじゃありゃぁ……あれ全員ショッカーライダーに変身するんでありますか!?」 カプセルにはそれぞれ数字がNo.5から順番にプレートに刻まれており、ケロロにはそれがまるでライダーシリーズに思えてしまう。 「いや、変身はしないけど。あらゆる状況での闘いを想定して調整している。」 「やべぇよ。アンタ……男の中の男であります!」 きっぱりと崇高の眼差しできっぱりと答えるカエル。 そんな彼に男性は興味が湧きはじめていた。 このカエルは……認められなかった自分の技術を褒めた。自分を認めた……。 ただそれだけ……。 それだけでもスカリエッティにとっては充分な感情である。 ふわふわと、気持ちが柔らかくなって。知らないうちに自然と口元は緩んでいた。 「ありがとう……。」 「ケロッ、自信を持った方が良いーであります。」 にこにことこちらが照れてしまいそうになる輝かしい笑顔を見せてくれるケロロ。 そんな彼に男性はまだ自己紹介を済ましていないことに気付き、口を開く。 「ありがとうカエル君、まだ名乗っていなかったね。私はジェイル・スカリエッティ、科学者をやっているんだ。」 おっ、自己紹介は宇宙共通の最初のコミュニケーションでありますな! とスカリエッティと名を告げた彼にケロロは気を良くし。ビシッと両手をを腰に沿え、右手を斜めに額にくっつけて名を名乗る。 「ケロッ!我輩、ガマ星雲第58番惑星 宇宙侵攻軍特殊先行工作部隊隊長 ケロロ軍曹であります。」 「宇宙……それは興味深いね。軍曹君と呼べば良いのかな?」 「ノンノンノン!コミュニケーションに遠慮なんて無しだって~。好きに呼んで良いであります。」 スカリエッティの尋ねに「わかってないなぁ。」というかのように肩を浮かせてその小さな緑色の右手をひょっこりと差し出す。 「だから我輩も、スカ殿と呼ぶであります。」 ケロロの言葉にスカリエッティは彼の右手に自身の右手を重ねて握手を成立させる。 スカ殿か……。 初めてあだ名ような呼び方を付けられ、嬉しそうに微笑んで小さな彼の名を呼ぶ。 「よろしくね、ケロロ君。」 「よろしくであります。」 冬の寒さを溶かしていく澄みきった春風のように純粋な心のまま成長した科学者と宇宙人が出会った。 そして、ミッドチルダの世界に嵐を巻き起こす……のは後の話。 「ねー、スカ殿。この娘の名前おすぇーてー。」 ぴょこっと寝台に飛び乗り、横たわる少女を見遣りながらケロロはスカリエッティから名を尋ね。 教えられる。 その名は 「ああ、彼女はNo.4・クアットロだ。」 伝説のアノ人の仮の名前にケロロは更に興奮したのか目を皿のように丸く広げ、クアットロへと敬礼をする。 まさか、メガ・バズーカ・ランチャーを限界まで撃ったお方に会えるなんて……我輩感無量であります!! 「ケロ!4番目とかマジでカッケェェ!最高じゃん!」 「そ、そうかい?」 ケロロは真っ直ぐいて白と黒の美しい配色の眼から涙を溢れていた。 そんな彼に「何故泣いているんだ、ケロロ君は?」とスカリエッティは聞きたかったが彼から熱い何かを察し、言葉をかけれない。 「ねーねー、早くクアットロ殿起動しないでありますか?」 「え、軽っ。」 今の今熱い何かは何処へいったのか、けろっと雰囲気が切り替わり。ケロロは急かすかのようにスカリエッティに尋ねてきた。 が、スカリエッティも新しく出来た小さな友人の楽しそうな笑顔を見たくもあり……彼から少し離れて近くのコンピューターへと歩み寄る。 あれだけの反応だ……他の娘達にも会わせてあげたい。 「ケロロ君、クアットロは起動できないから先にNo.1から3までの娘達を紹介するよ。」 「マジ!?会わせて会わせてー!」 意外であったスカリエッティの言葉にケロロは。 プロトタイプからG-3も居んの!?と驚きと喜びが心を高揚させる。 そして、手元のコンピューターに設けられた通信機器にスカリエッティが誰かの名前を呼び。すぐに三人の女性がケロロ達の居る研究室へと到着した。 「まず三人共紹介しよう。彼はケロロ君、私の宇宙の友人だ。」 スカリエッティからの紹介に三人は同じタイミングで頷き、ケロロを認識して一人の女性が先だって挨拶をし始める。 「No.1、ウーノです。よろしくお願いしますケロロ君」 「彼女は情報処理や私の秘書を務めている。」 スカリエッティと同じ紫色の長い髪を揺らし、ぺこっと頭を下げる彼女に続き、金髪の女性と紫色の短髪の女性が前に出てケロロと握手を交わす。 「そして次はNo.2とNo.3。No.2は潜入や隠密行動を特化してNo.3は高速戦闘に特化している。」 「名前はドゥーエ、よろしくねケロちゃん。」 「トーレだ。よろしく頼む。ケロロ。」 そんな彼女達にケロロは元気よく笑顔を浮かべ、昴ぶった心が影響して震えた右手で敬礼をする。 やべぇよ……これならケロンはあと10年は闘えるであります……ゲロゲロリ。 「ウーノ殿、ドゥーエ殿、トーレ殿。よろしくであります。我輩こんなにガンダムに会えるなんて夢みたいであります!」 その笑顔は輝かしく、まるでさんさんと大地に恵みをもらたす太陽のように明るい。 彼の笑顔を見る者にさえ恵みをもたらすように……。 スカリエッティから紹介され、知り合ったばかりの戦闘機人の彼女達も彼の存在は好印象となって焼き付いた。 「ガンダム?」と三人は同時に首を傾げたが。 とくにトーレはケロロと左手で握手したまま、彼の姿に見入ってしまっている。 なんて、つぶらな瞳なんだ……可愛い。 「…………。」 「ケロ?トーレ殿どうしたでありますか?」 トーレの顔を見上げると彼女の瞳は潤みを帯び、頬はほんのりと赤く染まっていた。が、ケロロはその反応が分からず。?を浮かべて尋ねた。 「ああ、いや、そ、そのだな。」 ケロロからの尋ねにトーレは途端に慌ててしどろもどろになってしまう。 そんな妹の態度を姉二人は何と無く理解していた。 ウーノは、可愛いもの好きだから……。と ドゥーエは、スイッチ入ったわね。と 「可愛いからってトーレ。ケロちゃん一人じめしないでよ。」 「あ、す、すいません。ドゥーエ姉様。」 注意をされ、名残惜しむようにケロロを見遣りながら彼から少し離れ、今度はウーノとドゥーエがケロロの頭を撫でたり抱きしめたりしてくる。 「ケロロ君、ウーノお姉ちゃんって呼んでね。」 「ウーノお姉様ズル。なら私もお姉ちゃんで良いわ。」 「ケロっ、お姉ちゃんでありますか?」 なかなかに彼女達に受けが良い彼にスカリエッティは口元に手を沿えて笑みを零してしまう。 思ってたよりも、ケロロ君とこの娘たちの相性は良いみたいだ…… 待てよ。ケロロ君は宇宙から来た。ということは船でか……。 彼の言葉に推測し、スカリエッティはその疑問を口に乗せる。 「ケロロ君、君の宇宙船を見せてくれないかな?」 「良いでありますが。」 ウーノに抱きしめられたままケロロは不思議そうに「ケロ?」と首を傾げてそう答えた。 「ハッ…………。」 が、そこで彼は船と仲間達、洞窟を壊してしまった事を直感的に思い出す。 あ、忘れてた……みんな脱出したかなぁ。 「ゲロォ……。」 途端にげんなりと、痩衰えるケロロの表情にスカリエッティは?を浮かべてしまう。 「どうしたんだいケロロ君?」 「ケロ……そのぉ。とっても言いにくいのでありますが。」 「?」 その場にいた一同が「なんだろう。」とケロロの言葉を待つ。 そして 「入口壊しちゃった♪」 てへっ。とケロロはキャップを被ったような頭に両手を沿えてぶっちゃけた。 そんな彼を見て、ついに我慢出来なくなったトーレがウーノ、ドゥーエに囲まれていた小さな宇宙人に抱き着く。 「きゃわいぃぃ!!」 「ゲロッ!?」 その力は半端なものではなく、愛の篭った怪力で抱きしめられ。 次第にケロロの緑色の肌が赤く染まり、青くなって意識が薄れていく。 ケロ……ああ、見える。時が見えるでありまーす。 〔りまーす〕 〔まーす〕 〔まー〕 何故か心の中で語尾が反響する。 そしてケロロはぐったりとトーレの腕の中で気を失った。 「ちょっとトーレ、ケロロ君死ぬから!!」 「唯一のマスコット殺さないでよね~。」 姉二人からの指摘にケロロの可愛さにスイッチが入っていたが、ハッと我に返り。 ケロロを見下ろすとケロロは白目を向いて口から魂が立ち上っていた。 「ぁあっ!大丈夫かケロロ!?」 そんな娘達やケロロの光景をスカリエッティは嬉しく思っていた。 これは良い出会いだ、何となくだけどこの施設にいるのが楽しい……。 慌ててケロロを介抱しているトーレ達を面白いそうに眺め、そっと笑い声を零す。 「さて、入口の確認とケロロ君の船を見てみるかな……ふふ。」 ケロロ「さて、次回のリリカルケロロ軍曹STSは−−」 ギロロ「まて貴様、何を忘れてくれてたんだ!!」 タママ「ひどいですぅ!」 クルル「まぁ、好き勝手出来るから良いけどな。クーックックック」 ケロロ「まぁ、よくある事じゃんドンマイドンマイ。 第2話「ケロロ小隊、散らばっちゃった。であります!」てことで……どすか?」 ギロロ「ごまかすなぁ!!」 ケロロ「ゲゲ~ロ。」 ゼロロ「あれ……皆は何処?また、僕一人……ぼっちなんだ…………。あはは、そうなんだ。そう……だよね。うん、分かってたよ。」 前へ 目次へ 次へ
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登録日:2011/08/30 Tue 17 31 00 更新日:2024/05/02 Thu 02 52 26NEW! 所要時間:約 6 分で読めます ▽タグ一覧 リリカルなのは 公務員 和製BoS 執務官 弁護士 時空管理局 検察 次元世界 海 管理局 裁判 警察 陸 魔法少女リリカルなのは 僕らが扱う事件では、法も守って、人も守る。 イコールに見えて、実際にはそうじゃないこの矛盾が、いつでもつきまとう。 自分たちを正義だなんて思うつもりはないけど、厳正すぎる法の番犬になりきるつもりもない。 難しいんだ。考えるのをやめてしまったほうが、楽になれる。 まともにやろうと思ったら戦いながら、事件と向き合いながら、ずっとそういうことを考え続ける仕事だよ。 時空管理局は魔法少女リリカルなのはシリーズに登場する組織である。 【設立までの歴史】 古代ベルカ王国がまだ存在していたころ。 技術の発展により次元の海、そして次元世界の存在が明らかとなり、 当時強大な力を持っていたベルカは近隣諸国はおろか次元世界にさえも進出し始めていた。 終わりなき同盟と離反、魔導武装と質量兵器の発展の末、 ベルカが戦端を開いた戦乱はそのベルカそのものが崩壊することで決着した。 しかし残されたベルカの民は各々が覇権を争い再び戦を始めた。 繰り返される戦いを止めるため「ゆりかご」を有する聖王家が諸国を制し統一を図った。 これが「聖王統一戦争」である。 結局はこの乱世も「ゆりかご」の消失、聖王家の断絶により幕を閉じ、 冥王や覇王、雷帝など各王家が各世界で細々と生きることとなった。 皮肉にも、戦争によって魔導技術は発展したが正統ベルカを名乗る者はいなくなり、その術式は途絶えてしまった。 その後民と共に残されたベルカ、更に遡ればアルハザードやそれらに匹敵する次元世界の遺産……。 質量兵器や後に「ロストロギア」と呼ばれる技術は恩恵であると同時に、次元震などの災厄を引き起こしかねない脅威でもあった。 そのころ、次元世界には二つの新興勢力があった。 一つは戦乱を平定した聖王家を信仰の対象とした「ベルカ聖王教会」 もう一つは、魔導技術の著しい発展によって台頭してきた、後の第一管理世界「ミッドチルダ」 ミッドチルダは次元世界の平和・安寧を維持する組織の結成を各方面に提案。こうして設立されたのが時空管理局である。 設立からおよそ100年と戦乱に比べ歴史は短いながらも、現在その影響力は次元世界でも最大のものとなっている。 【概要】 上記の歴史の通り、その存在目的は「次元世界の平和維持」である。 ここでいう次元世界とは基本的に「管理世界」のことを指すが、管理外世界でも次元犯罪などが起きた場合対応する。 ※管理世界と管理外世界。 管理世界とは「次元を移動する技術があり、それによって他の世界の存在を知り、かつ管理局に所属している世界」のこと。 地球はそもそも次元移動技術が確立されていない。ナンバリングは「第九十七管理外世界」 新暦65年の時点で、管理世界は35。管理外世界も150を超え、数年おきに新たな世界は発見されている。 しかし現在の状況と過去の経緯は過酷であり、理想は高く、現実としても誰かが為すべきを為しているが、絶望的なまでに手が回りきっておらずに組織に歪みが生じている状況にある。 現実で例えるなら、現代もなお発見され続ける「WW2当時の不発弾が全部核弾頭+中には日本地図を書き換える威力のものもある」という状態で、それを警視庁だけで日本全国+経済水域200海里までカバーさせられる感じである。 それらの歪みが表沙汰になったのがアニメ第3期StSといえる。 この他にも例を挙げるならオルセアと言う世界は次元移動手段はあれど内戦続きかつ所属の是非で揉めており、局は迂闊に手を出せず座してみているしかない状態にある。 StrikerSの公式HPに書いてあるが、次元世界が共同で運営している組織である。 管理世界では治安維持のため「質量兵器の破棄」及び「地上部隊の設置」が義務付けられている。 階級は現実の陸上自衛隊式。 ただし陸士長や三等陸曹など自衛隊にあって管理局では無い階級もある。 忘れられがちだが構成は魔導師ばかりではなく、クルー・スタッフまで考えると魔法が使えない人間のほうが多い。 管理局は大別して二つの組織から成り立っている。 出典:魔法少女リリカルなのは The MOVIE 2nd A's、セブン・アークス、アニプレックス、2012年7月14日、©NANOHA The MOVIE 2nd A's PROJECT ◎次元航行部隊 次元航行船で次元の海をパトロールする部隊。通称「海」 シリーズではA sまでこちらしか出てこない。 本局は次元の海に設置された超巨大な円筒状の施設。無限書庫もここにある。 次元震の観測や次元世界を又にかけた事件、それらの裁判が主な仕事。 実際の海軍よろしく人情人事をしたり情状酌量の判決が出たりと柔軟な対応であることが見て取れる。 レティ・ロウラン提督曰く「才能と未来への意志があればそれでいい」 無限書庫 次元航行部隊本局にある次元世界最大のアナログデータベース。 確認できる世界の全ての書物が保管されたまさに無限の資料庫。内部は円筒形で無重力空間になっている。 最近まで入れっぱなしのほったらかし状態だったがユーノ・スクライアが司書になってから整理され検索効率も上がった。 ヴィヴィオも司書の資格を持っているがオットー曰く「普通じゃない」らしい。 武装隊 非常時に現場で活動する武装魔導師の部隊。 高町なのはのように普段は戦技教導隊で指導員をする者もいる。 ◎地上本部 時空管理局の地上部隊の本部。 各次元世界に駐留して治安維持を担う部隊。通称「陸(おか)」 StrikerSではこちらがメイン。 海に比べて規則に厳格。イレギュラーな存在を嫌う傾向にある。 縄張り意識も強く、現場派遣に影響が出ている。 実動部隊ということからか作中の描写も陸士隊・教育隊・自然保護隊【※外部組織ではあるが局員と同等の扱い】・遺失物管理部など部署が明確。 なお地上の名を関するが、別に厳密な意味で地上担当ではなく航空部隊の存在も確認できる。 (そもそも海の担当が次元世界で、陸の担当が管理世界の地上であるので航空戦力の存在自体は別問題) 海に比べて与えられる予算が格段に少ない上、配備されている人員も海よりも能力が低い。 一定の能力に達した人材は海が引き抜いていってしまう為、 満足な活動が行えてるとは言いがたく、次元世界の住民からも信頼が低いととれるシーンもある。 陸はなんとかこの状況を改善したいと考えているが、それが海にとっては「危険な戦力増強を図ろうとしている」と警戒される事に。 この海と陸の状況と意識の格差がStrikersにおける事件の発端の一つとなっている。 本部はミッドチルダ首都クラナガンに位置。JS事件で多大な損害を被った。 トップ前任者は故レジアス・ゲイズ中将。後任は不明。 ▼最高評議会 旧暦の時代に世界の平定に尽力し引退後も評議会を設立して強大な影響力を持つ三人の人物。 現在は肉体を捨て、脳髄のみの姿で生命維持ポット内に漂っている。 しかし、現在ではその思考は硬直、先鋭化して自分たちの思惑で世界を動かそうと考えるようになり、 アルハザードの技術を元に「無限の欲望(アンリミテッド・デザイア)」ことジェイル・スカリエッティを生み出し、 彼に純粋なサイボーグ兵士である“戦闘機人”すなわち“ナンバーズ”を製作させたり、 さらに地上本部のレジアスを焚き付けてより強力な地上用兵器を導入しようとしたが、 JS事件に際してスカリエッティの命を受けたナンバーズNo.2ドゥーエにより全員抹殺された。 時空管理局における最高意思決定機関のように表現されているが、 劇中ではレジアスにしか直接的な指示を出しておらず局全体においてどれほどの権限があったのかは不明。 また、それほど重要なポストでありながら彼らの死後この評議会という役職自体がどうなったのかも定かではない。 【その他】 執務官 階級ではなく資格・役職。 主な仕事は「事件・法務案件の統括」 部隊に所属して案件処理をする内勤派と得意な分野の事件を担当し捜査・指揮を行う独立派がいる。 クロノ・ハラオウンは前者でティアナ・ランスターは後者。 フェイト・T・ハラオウンのように両方担当する場合も。 扱う範囲が広く相当な知識その他を要求されるため試験はかなりの難易度でフェイトも浪人した。 JS事件以降は更に厳しくなった。 StSXによると多くの執務官は凶悪事件を避けたがるという。 これは仕事のスタイルが部署や個人によってまちまちであり、内勤派はこういう仕事をしたくないからだと考えられる。 執務官は警察と検察が合体したような役職なのも後押ししているのだろう。 PT事件と闇の書事件の担当執務官であるクロノが裁判で弁護を担当したことから、弁護士を兼ねる事もあると思われる。 機動六課 ロストロギアを扱う遺失物管理部の第六課。 主にレリック問題を扱う専門部隊という名目で設立されたものらしい。(真の理由はまた別) 試験運用だったため一年で解散となった。 また、問題が起きた場合を考慮して解体しやすいように、 若いメンバー(年齢ではなく実務経験等)で構成されており、隊の雰囲気は地方公務員のような穏やかな雰囲気。 他の部隊に譲渡されるのだろうが、特に役職が特殊でない新設部隊に新施設が作られるとか、なかなか予算的な意味で怖ろしいことをするものである 後に主要メンバーのほぼ全てが対次元犯罪部隊「特務六課」として再結集した。 嘱託魔導師 管理局に協力する民間魔導師。初期のなのは、フェイトはこれにあたる。 魔導師ランク 魔導師に与えられる能力階級。 最上位のSSSからFまでの11段階に加え「+」「−」がある。 AAでも上等だがさらにS+以上は「オーバーS」と呼ばれ熟達の技能を持つことの証でもある。 「総合」や「条件付き」など変則的な能力の場合前置きがつく。 +は0.5ランク扱いのようだが、-は不明。 ただし、単純な強さのランクではなく、あくまで目安である。 また、中にはひとつ上の力量を狙えるにも関わらず昇進試験を受けていないものもいる。 だから自己矛盾するけど、僕は、自分の義妹やその友人には、 もう少し気楽に追記・修正してもらいたい気がするな。 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] 再度、コメントをリセットしました。 -- 名無しさん (2016-10-24 08 27 11) 初期はちょっとリアル志向な魔法の国程度の扱いだったのにな… -- 名無しさん (2017-03-09 20 22 53) どうしてこうなってしまったのか、VSでは存在すら全く出てこなくなってしまった -- 名無しさん (2017-07-28 14 59 31) StSの件は時空管理局によって作られた、魔導士(魔力)至上主義社会も原因のひとつではないのかな?事実レジアスは魔力がないという事で、色々苦労させられている事を生前のゼストにぼやく場面があったし。 -- 名無しさん (2017-08-14 11 12 18) なんか様々な世界の人間いるのに普通の人型ばっかでエイリアン型みたいなのいないのはなんでかな? -- 名無しさん (2017-09-16 22 32 46) 荒らしの書き込みを削除 -- 名無しさん (2017-09-17 23 59 58) 世界を守る為にオブジェクトを集める…… -- 名無しさん (2018-02-04 02 26 54) 途中送信失礼 世界を守る為にオブジェクトを集める……SCP財団かな? -- 名無しさん (2018-02-04 02 27 37) 個人的には魔道士ランクの-はレアスキル関連かなと思ってる、該当項目がレアスキルで代用もしくは底上げすれば出力なんかが及第ラインに到達する場合-がつくとかそんなん -- 名無しさん (2018-04-05 23 46 31) 超科学の魔法技術だけで、あらゆる世界の治安を守ろうってのが間違いなんじゃね? 次元世界の中に魔法で手が出せない力があるかもしれんでしょ -- 名無しさん (2019-05-21 20 38 59) 描写されてないだけなんだろうけどあれだけモブの局員がクソ雑魚なのによく事件に対処しきれてるよな -- 名無しさん (2019-06-25 17 40 15) ↑しかも圧倒的に人材不足っぽいんだよな。 -- 名無しさん (2019-06-25 18 39 28) ↑2デカレンジャーやGAROと一緒であんな大事件が日常茶飯事というわけではないんだよ -- 名無しさん (2019-06-25 18 50 30) ↑9 超技術を持ってた古代文明のアルハザード文明(仮称)が存在してそれが人類文明・アルハザード文明が何かの拍子に滅んで各次元世界が分断されて再構築の後に古代ベルカ王国とかが出てくる感じなら「各次元世界に人類が広まったのが同一起源(アルハザード)で、それが再集合してる状態」だから、居なかったのか・視聴者の認知に至らない段階で滅ぼしてるのかで人類ばっかりなのかも -- 名無しさん (2019-08-08 18 04 34) 荒らしコメントを削除 -- 名無しさん (2020-06-02 17 44 06) 内輪もめが悲惨な組織だったりする(陸と海) -- 名無しさん (2021-09-05 13 35 41) ロストロギアという名の地球破壊爆弾かそれ以上の劇物が何だかんだ転がってる世界観という事を考えると海の行動も仕方がないけど、それはそれとして治安維持回りの戦力不足がヤバイから陸もそりゃキレる、という構造だから正解はない雰囲気。いや「魔導師以外の戦力化考えろ」とは思うけど、それを主張できる環境でもなさそうなのが…… -- 名無しさん (2021-09-05 14 19 34) そもそも劇中でも(どんなロストロギアがあるかもわからない)未知の世界が発見され続けてるから、未来とは言っても文明的には円熟期じゃなく開拓期に相当するんだよな。案件が世界単位で増え続ける一方で人はそう簡単に増えないから自転車操業というにも憚られる人材不足でなんとか回してる。法整備だって碌に手が回らないのが現実だろう -- 名無しさん (2021-09-05 15 52 32) 作中に登場した世界の番号だけを見ても、管理世界が61、管理外世界が97、無人世界が34、観測指定世界が162まであるからな。しかも管理外世界でもそれこそ地球みたいに事件が起きたら人員送らなけりゃならん。まあ、ロストロギアのリスク(下手すりゃ他の世界まで巻き込んで破滅する)を考えれば積極的に手を広げるのも合理的というか必要なことではあるんだが -- 名無しさん (2021-09-05 16 20 22) 相談所で報告された編集の差し戻し及び違反コメントとそれに関わるコメントの削除をしました -- 名無しさん (2022-09-14 01 30 36) 今更だがJS事件って管理局の存在意義を根幹から揺るがしかねない超特大のスキャンダルだよね。しかも真相を知ってるのがスカリエッティただ一人だし、悪意を持って次元世界全土に拡散したら大惨事になると思う。 -- 名無しさん (2022-09-28 12 37 45) 報告にあった違反コメントを削除 -- 名無しさん (2022-09-29 12 12 40) 報告にあった荒らしコメントを削除しました。 -- 名無しさん (2023-07-12 20 44 19) 「質量兵器禁止≒刀狩令」と置くと世間に出回った武器の違法化による武装蜂起の抑止が目的で、魔導師は禁止が現実的ではない(生来の特性として魔力を持って生まれる)から取り締まり側にしつつ被害が破滅的なロストロギア対策に投入、が本編頃の管理局のポジション? 質量兵器のイメージが過剰っていうならいいけど全盛期の質量兵器がガチで個人で都市を吹き飛ばせる代物とすると解禁方向で動くのは無理だよな、とも -- 名無しさん (2023-07-25 01 18 00) なのはさんがその気になれば気軽にミッドチルダを消し飛ばせる 質量兵器も魔法も等しく危険 むしろ個人の資質に大きく依存する魔法の方が危険 -- 名無しさん (2024-04-23 10 33 48) 危険性の方向性としては(「作ってる場所を潰す」で何とかできる質量兵器ではなく)「子供産んだら魔力持ちかもしれない」が一番だから人が人として営みを続ける限り排除しえないリスクだし、やろうとしてる事としてはやってる事をある程度明かした状態のシビュラシステム(システムの恩恵を受けられる一般人はシステムの下で恩恵を受けながら暮らす・システムで扱いきれない例外側の人間はシステムの実務者にする)だろうから、「危険だから」魔導師を花形として体制が使える様にしてる構図かと -- 名無しさん (2024-05-02 02 52 26) 名前 コメント
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2話 南光太郎は砕けない 夜遅も遅いということで光太郎はなのはに寝床を紹介してもらった。 明日は自分についての事情聴取があるらしい。 ゴルゴムとの決戦、空港火災での救助を経て光太郎の体力は限界だった。 精神的にはゴルゴムの壊滅によって少し気が楽になったが、 信彦の事を考えると、シャドームーンの魂がまた何かをしてしまうのではないかと考えてしまう。 そして、ここは異世界。 やはり、光太郎に安心はおとずれなかった。 体力も限界に達している今、 意図せずとも瞼が落ち、光太郎は眠りに落ちていった。 ここはどこだろうか? そこは、何もない真っ暗闇の空間。 光太郎が辺りを警戒しながら見渡すと、太陽のように輝く球体があった。 『光太郎、光太郎…』 脳に直接、声が響いてくる。どんな抵抗をしても聞こえてきそうだ。 「だれだ貴様は!?」 予期せず事態に、光太郎は反射的に構え、警戒をする。 『私はキングストーンお前の魂さ…』 「僕の魂・・・」 『光太郎・・・創世王の無茶な移転から、この世界に導くために我が体は傷つき お前の変身が不完全になってしまった』 『おそらく、シャドームーンも同様だろう…』 『そしてお前はこの先、再びシャドームーンと戦うことになるだろう それがお前の宿命でもある』 「そんな宿命なんて嫌だ!僕はみとめない!」 光太郎は即座に否定する。 (創世王との戦いの時、シャドームーン・・・いや、信彦に渡したシャドーサーベルが 僕が求めた時に確かにここへ来た!信彦が握っていたはずなのに! あの時も、僕が信彦に敗れ死んでしまった時に とどめを!キングストーンを取り出さなかった!!) 光太郎は信彦が人間の心にもどる可能性を信じ続ける。 ・・・信じ続けたい・・・それは彼の願いかもしれない。 『やはり受け入れぬか・・・』 『光太郎、今のお前の力は不完全だ』 『だが、光太郎・・・ゴルゴムとの戦いは、お前に自身にも凄まじい力を与えた 力だけでない、経験、判断、機転、すべてを成長させた』 『その力を使えば初めは賞賛するだろうが やがて人々はお前を恐れるだろう』 『賢き道をゆけ、光太郎・・・』 「……夢だったのか?……」 そう呟いた、朝を迎えた光太郎の首には 太陽の光を受けながら輝く、一つの赤い宝玉が掛かっていた… 「これから、いくつかの質問をしますので、それに答えてください」 金色の髪をした女性、フェイトがハキハキとした声で言う。 なのはのことといい、この世界ではこの年で働くのは当たり前なのだろうか? そんなことを考えながら、光太郎はフェイトの事務的な声につられ、丁寧に返事をする。 まず聞かれたのは、出身世界のことだ。 出身世界という彼の常識ではまず聞かないような言葉だ。 幸い、なのはからは事前にこの世界の常識や管理局の仕事についてはある程度説明されている。 当然だが地球と答えた。 次は、デバイスの出所だ。 今確かに、光太郎はデバイスをもっている…ということにしている。 あれはキングストーンなのだが、今は同じようなものだ。 光太郎は、ゴルゴムという組織から逃げ出すために奪ったと答えた。 ……あながち間違えでもないかもしれない。 そして自分は、ゴルゴムと戦い、滅ぼした時に道ずれにこの世界に飛ばされたと答える。 大まかな内容はこんなものだ。 光太郎は言っていないことがある。 一つ目は自分と信彦はゴルゴムによって改造された改造人間であること。 改造人間といっても、ゴルゴムの王、創生王になるために造られたもので ゴルゴム脅威の技術力を結集させたものでもある。 そして、信彦はゴルゴムによって洗脳され、自分と戦っていたことだ。 自分は改造人間だ。 こんなことを言ったとしても、そう簡単には信じてもらえはしないだろう。 それに人間ではないなんて思いたくも、言いたくもない。 「それで光太郎さんって、どないひとやったの?」 茶髪の女性、八神はやてが目を輝かせながらなのはに質問をする。 「一言でいえば熱い人かな? 初対面の時に敵と勘違いされてね、その時の表情はすごく怖かったなぁ でも、女の子を助けた時の表情はとても優しくて、とてもうれしそうだった…」 「まさか、なのはちゃんが敵と間違えられるなんてなあ なのはちゃん、かぁいいのに」 「あはは…魔術師を初めて見たからかな?」 さすがになのはも初対面でいきなり敵扱いはショックだったみたいだ。 「でも、いいひとなんやろ?」 「うん、そうだと思うよ」 救助を終え、再び出会った時にみせた時の笑顔 それはなぜか、なのはにはその笑顔がなぜかさみしそうに見えた… 2回ドアをノックする軽快な音が響く。 「なのは、はやて、私だけど」 フェイトが光太郎の聴取を終えてきたらしい。 「フェイトちゃん、待って、今あけるから」 そういうとなのははドアの鍵を開ける。 「ありがとう」 そう一言いって、フェイトは公務用の服を脱ぐと なのは達がいるベッドに、フゥと一息はいて腰をかけた。 「お疲れ様。どうだった?」 「まず、あの人はなのはとはやてと同じ地球出身、 それだけだったら、もう解決なんだけど…」 「なにかワケありみたいやね」 「彼、向こうの世界で、ある組織と戦って身寄りの人々を失ってしまったの」 フェイトの言葉に、なのはとはやての顔から笑みが消える。 「それに、転移の影響で兄弟同然の友達と離れ離れになってしまっていて その人を見つけない限り、自分だけ帰ることなどできない ……そう、言っていたの」 なのは、フェイト、はやての3人は並々ならぬ親友である。 もし、誰か一人でもいなくなってしまったなら、どんなことをしてでも見つけたいと思うだろう。 その点、3人は親友を失ってしまうことの辛さがよくわかっていた。 自分にとって、大切な人がいなくなってしまったらどんなに辛いか、 そんな暗いことをだれもが思い、重い空気がながれる…… 「す、少し、暗くなってしもうたな、光太郎さん実践経験はあるそうなんやろ? なんやら、実力を見てみたいな、もちろん本人がよかったらやけど」 重い空気を変えようとはやてが、新しい話題を持ち出す。 「なら、私が相談してみる」 そうフェイトが言い、話を進める。 「じゃあ、フェイトちゃん、よろしく頼むな。 あと、もう一つ、聞いてもらいたいことがあるんやけど……」 そして、彼女は新部隊を造るというを夢を話し始めるのであった。 夢を語る彼女は、確かに輝いていた。 戻る 目次へ 次へ
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リリカルガウザー プロローグ 「僕達は、虫けらじゃない!」 これは黒岩省吾がこの世界で他人から聞いた最後の言葉だった。 そしてそれはまだ背の伸びきっていない少年が言った、少年の父親を奪った自分への怒りを込めた言葉だった。 黒岩省吾、またの名をダークザイド最強の剣士・暗黒騎士ガウザーにとって、人間と言う生き物はちっぽけで愚かな、動物以下の種族でしかなかった。 常に私欲に塗れ、自分以外の他人を蹴落とし、愉悦と快楽ばかりを求め続ける。 現に自分の好敵手であった男は、そんな愚かな人間たちの本性を具現化し、自己中心的な最低の人間だった。 「こんな屑共が霊長類として世界に君臨し、我々ダークザイドがこそこそと人間共のラームを吸いながら社会の隅で生きていくしかないなど許せない。」 そう思ったからこそ黒岩は、人間社会征服の為に東京都知事となり、東京を国として独立させ、その皇帝に就任して弱い人間の淘汰と強い人間の選別を行おうとした。 まず東京を手始めに厳しい訓練を強制的に与え、身体能力が低く、訓練についていけない力の無い人々、をダークザイドの餌にして排除する。 そして残った強い人間達を奴隷とし、一生ダークザイドのために働き続ける労力として利用し、子供達にはダークザイド社会に適応するための教育を施す。 やがてはこれを世界中に広め、人間達は弱き者は滅び、強き者はダークザイドのために働き続けるダークザイドのための世界へと地球社会を変えようとしていた。 だが、その野望は好敵手であった光の戦士とその相方の緑色の戦士でもなく、自分が心の底から愛した女性でもなく、自分が見下していた人間の子供達に打ち砕かれた。 子供達が投げた手榴弾の爆風が、子供達が撃った銃の弾が、自分の身から生気を奪っていった。 ここでガウザーに変身すれば助かったのかもしれないが、出来なかった。 「僕達は虫けらじゃない」 自分が見下している人間の中でも、もっとも弱い立場にいるはずの子供達が、いづれは世界を統べるであろう皇帝となる自分を恐れずに立ち向かってきた事に驚き、そんな子供達が持つ力に興味を持ったからだ。 「撃ってみろ…その銃でもう一度俺を撃ってみろ!」 子供達のリーダー格であった少年に向かって黒岩は言った。 もし自分が撃たれれば、新しい何かが分かるかもしれない。 図書館で覚えた付け焼刃の知識ではなく、何かもっと実のある何かが分かるかもしれない。 自分の死の果てに見える物が知りたかった。 皇帝になることよりずっと重要だと思った。 少年は銃を撃った。放たれた銃弾は黒岩の胸を貫いた。 だが後悔は無かった。 むしろ自分が…皇帝が死と引き換えに握ったモノの事を思えば、死など安いものだと思った。 黒岩は残った力を振り絞り、付近にあった沼の中まで歩くと、今なお憎悪に満ちた目で自分を見る少年に向けて、自分に新たなモノを見せてくれた少年への感謝を込め、自分が今まで覚えてきた中で一番のお気に入りである薀蓄を語ろうとした。 「知って…知っているか!?世界で始めての皇帝は…皇帝は…」 だが、虚しくも言葉は続かなかった。 力を使い果たした黒岩は、水面の上に倒れ、そのまま沼の中へゆっくりと沈んでいった。 : 冷たい沼の底へと沈んでいく中、黒岩は三人の人物の事を思い出していた。 一人はダークザイドの同士であり、自分の秘書であるユリカ。 黒岩を心から愛し、狂信的とも言えるほど黒岩に尽くしてくれた女。 だが黒岩の表面的な強さだけを愛し、内面を分かってくれなかった哀れな女だ。 彼女は黒岩が向かうはずだった皇帝の王座の前で永遠に黒岩を待ち続けるだろう。 例え黒岩がもうこの世にいないことを知っても、何十年も何百年も、死んで骨となっても、永遠に黒岩を待ち続けるだろう。 いつか黒岩が王座に座り、皇帝となる姿を幻視しながら… 黒岩は初めて、この哀れな女に「すまない」と、心の中で謝った。 もう一人は涼村暁、またの名を自らの宿命のライバル・超光戦士シャンゼリオン。 この男と自分は水と油だった。 この男は学も無く、女好きで、毎日毎日楽しいことだけを求め続ける煩いだけの奴だった。 こんな男が自分の最大の障害になっていると思うと、頭から湯が出る思いだった。 だが、感じたのは不快感だけじゃなかった。 黒岩は暁を厄介に思うと同時に、どこかで彼と戦うことに生きがいのようなものを感じていたのだ。 そして、なぜ自分が彼に勝つ事が出来なかったのかも今なら分かる。 暁は最低な人間ではあったが、黒岩には無いものを持っていたからだ。 それは仲間だ。 彼には仲間がいたから、どんな辛い状況に陥っても立ち上がったし、たった一人でダークザイドと言う凶悪な敵たちと戦い続けることが出来た。 黒岩は以前彼が放った台詞をふと思い出した。 「てめぇらに俺のライバルである資格は無ぇ!!」 暁の秘書・桐原るい(この時はまだ秘書ではなかったが)が暁のために作ってきてくれた弁当を闇魔人アイスラーに踏み潰されたとき、暁が黒岩・ガウザーと闇将軍ザンダー、闇貴族デスター、闇魔人アイスラーの四人に向かって叫んだ台詞だ。 彼は怒りを滾らせて戦い、四人を圧倒した。 このことからも、仲間が与える力と、そんな仲間を傷つける悪を憎む心が大きな力を与えることが分かる。 信頼できる仲間を持たず、一人で覇道を突き進もうとした黒岩が暁に勝てるはずが無かったのだ。 「(本当に…俺にお前のライバルである資格は無かったな)」 黒岩はこの時、暁という人間の大きさ、自分と言う物の小ささを理解した。 同時に、今ここで死ぬことに後悔はないが、できるなら彼に倒されたかったと心で思った。 最後は、自分が真に愛した女性、南エリ。 彼女と黒岩は恋人同士だった。 共に愛し合い、唇を交し合った仲だった。 黒岩がユリカではなく、エリを選んだのには理由があった。 ユリカが自分の圧倒的な強さに惚れ込んだのに対し、エリは自分の内面の弱さをしっかりと見つめ、愛してくれた女だったからだ。 付け焼刃の知識を自慢し、他人を見下すことしか出来ない自分の脆さを理解してくれるエリを、黒岩は真剣に愛した。 だが、二人は人間とダークザイド、正義と悪という種族と立場の違いからお互いの仲を裂いた。 だが、彼女への未練は捨てることが出来なかった。 おそらく彼女もそうだろう。 だから自分の死は、自分のためにもエリのためにも、過去の束縛を断つために必要なことだと思えた。 「エリ…どうか…幸せに…」 黒岩は薄れ行く意識の中で、彼女の幸福を願い、瞼を閉じた。 ∴ 「う…ん?」 太陽の暖かさと小鳥のさえずりを耳にし、黒岩は目を開けた。 「まさか、天国…なのか?…う!」 初めは極楽浄土かと思ったが、違うようだ。 服は濡れ、胸に銃弾の傷が残っている上に、上半身を起こそうとすると激痛が走る。 どうやら生きているらしい。 「まったく…我ながら丈夫なもんだ…」 起きることができないため、黒岩は寝たまま首を動かして周りを見回してみた。 どうやら自分が倒れているのはコンクリートの上のようだ。 周りには木が植えてあり、建物の壁と古風な作りの出入り口、窓が見える。 建物がかなりの大きさのようであるため、おそらくここはどこかの施設の庭だろう。 だがなぜ自分はここにいる?それに自分は死んで沼に沈んだはずだ。それがなんでこんな庭園に? 黒岩が自分がここにいる理由を考えていると、「大丈夫ですか!?」という女性の声が聞こえた。 ほどなくして、桃色がかった赤い短い髪の、ローブを着た女性が黒岩の傍にやってきた。 「凄い血…大丈夫ですか!?しっかりしてください!立てますか!?」 「あ…あんたは…?」 黒岩はまだ知らなかった。 自分がこれから辿る数奇な運命を… 予告へ 目次へ 一話Aへ
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リリカルガウザー 一話「闇の騎士、魔法の国へ」パートA 「大丈夫ですか!?立てますか!?」 ローブを着た短髪の女性は黒岩の濡れた体に触れながら大声でそう聞いてきた。 黒岩としてもここが何処かも分からず、痛みで立つこともできない状態なので、彼女の助けを借りる事にした。 エリ以外の人間に頼るのはあまり気が乗らないが、この際意地を張っても仕方が無い。 「痛みで上半身も起こせない…手を貸してくれれば助かる。」 「分かりました!少し荒っぽいかもしれませんけど、ちょっとの間ですから我慢してくださいね!」 女性はローブの裾をまくり、黒岩をひょいと抱き抱える。 「細身の割には力がある女だ」と黒岩は思った。 女性はそのまま出入り口の方まで黒岩を抱えながら歩いた。 : 女性は建物の中に入ると、古風な作りをした回廊を歩いた。 そして英語で「Medical room」というプレートが付けられた扉の前まで来ると、その部屋に入り、備え付けられていたベッドに黒岩を寝かせた。 そして医療用のツールを用意し、黒岩の上半身の服を脱がせるとツールを使用して黒岩の体から何発もの銃弾を抜き、いくつもの傷口を消毒して止血し、ガーゼを貼り付けた。 「これでよし…」 手当てを終えた女性は額の汗を拭い、傍に置いてあった椅子に腰掛けた。 「かなり多くの傷を負っていました。応急手当てだけじゃ心配ですので、今から救急車を呼びます。」 「いや…これでもういい。」 黒岩はゆっくりと上半身を起こした。 いくら死にかけていたとはいえ、闇生物の体は人間以上の自然治癒力を持っているため、適切な手当てさえしてもらえればある程度は動けるようになる。 あと数日もすれば体全体が万全の状態に戻るだろう。 「え!?さっきは上半身を起こすのも痛いって…」 女性は黒岩がいきなり上半身を起こしたことに驚き、目を丸くした。 「生憎、結構タフな体なんでな。銃の弾さえ抜いてもらえれば、後はもう大丈夫なんだよ。」 「はぁ…それは凄い…」 「所で、アンタは一体誰だ?ここは何処だ?」 「ああ、そうでした。私はシャッハ・ヌエラ。この協会の修道女です。そしてここは、聖王教会の本部です。」 「聖王教会?」 黒岩は聞きなれない単語に目を細める。 図書館で世界中の知識や建物、文化を調べ、数多くの教会の名前も知っているが、そんな名前の教会は聞いたことが無い。 黒岩は詳細な情報と、知らない教会についての知識を得るため、シャッハと言う女性にもう少し詳しい話を聞いてみようと思った。 「なんだその教会は?俺は地球上のありとあらゆる知識を頭に入れているが、そんな名前の教会は聞いたことが無いぞ。」 「地球の…あらゆる知識?何でも知ってるんですか?」 「ああ、例を見せてやる…」 黒岩は言葉を一端切り、一息吸うと、目つきを変えてシャッハを右手の人差し指で指した。 「知っているか!?世界で初めてキリスト教が国教として認められた国は、301年のアルメニアだ!その時の教会の建築は、シリアの影響を色濃く受けたものであったと言う!」 「そうなんだ…」 シャッハは腕組みをしながら感心して言った。 シャッハも地球についての知識はある程度持っているが、ここまで詳細な話しは知らなかった。 シャッハは黒岩がどの程度教会や宗教についての知識を知っているのか聞いてみたくなり、他の話題を聞いてみることに決めた。 「じゃあ、世界で最も古いステンドグラスについても知っていますか?」 「勿論だ。世界最古のステンドグラスは、ドイツのロルシェ修道院で、破片の形で見つかった!その修道院は七世紀に作られたが、ステンドグラスが作られたのは九世紀代と推定されているという!」 「そうなんですか…いろいろあるんですね…」 シャッハはこの話を聞いてさらに知らない知識への興味を持った。 彼女にとって聖王教会の修道女兼騎士として強さも大事であるが、博識であることもそれと同様に大事だ。 いや、むしろ修道女と言う戦いとは普通関わらない立場から考えれば、博識であることの方が大事かもしれない。 シャッハは自分を磨くために新たな知識の獲得を考え、黒岩の話を本格的に聞くことに決めた。 「じゃあ、色々な宗教についての知識を教えてください!まだまだ修行中の身である私にとって、貴方の話はとてもためになりそうです!」 もちろん、一度には覚えきれないため、宗教についての知識だけではあるが。 「ほう…俺の話が聞きたいか…よかろう、知っているか!?」 黒岩は自分の薀蓄を聞いてくれる人間がいたことを喜び、有頂天になって薀蓄を語り始めた。 黒岩の薀蓄は、好敵手だった暁には適当に流され、愛していたエリにさえも「あんたの薀蓄はもうウンザリ」とまで言われていたほど煩がられていた。 だが、今は自分の薀蓄を興味を持った目で聞かせて欲しいと言ってくれる人間が目の前にいる。 黒岩は煩がられたうっぷんを晴らすかのように、情報を得ることも忘れ、薀蓄を語り続けた。 : 2時間後、黒岩の薀蓄がようやく終わりを告げた。 シャッハは2時間休み無しで語り続けた黒岩への感謝と健闘を称える拍手をし、黒岩の額には熱弁した証である汗が光っていた。 「はぁ…はぁ…どうだ?」 「素晴らしいです!まさか宗教だけでもこんなに細かな知識があったなんて驚きました!修道女として、一歩高みに歩み出せた気がします!」 「そうか…それは良かった…ん?」 黒岩はようやく思い出した。 自分はこの聖王教会についての情報を問おうとしていたのに、いつの間にか自分の薀蓄教室になってしまっている。 久々に自分の薀蓄を嬉々として聞いてくれる人間がいたので、調子に乗ってらしくもなく熱くなりすぎてしまい、本題を聞くことをすっかり忘れていたことに黒岩はやっと気付いたのだ。 黒岩は恥ずかしさを感じ、それをごまかす為に「ゴホン」と一回咳払いをすると気を取り直し、先ほどの質問をシャッハにもう一度した。 「ところで、聖王教会とはなんなんだ?」 「あ!そうでした!」 シャッハも他人の質問を忘れていたことに恥ずかしさを感じたのか、一瞬だけ頬を赤く染めて慌てると、姿勢を直した。 「そういえば、貴方の名前を聞いていませんでしたね。」 「俺は黒岩、黒岩省吾だ。」 「そうですか…黒岩さん、貴方はミッドチルダや時空管理局について知っていますか?」 「ミッドチルダ?それに時空管理局だと?」 黒岩はさらに頭を悩ませた。 ミッドチルダに時空管理局、どちらにも聞き覚えは全く無い。 管理局というからには何かを管理するのだということは何とか分かるが、ミッドチルダと言う単語についてはさっぱりだ。 「どちらも知らん。」 「分かりました。それともう一つ、貴方は地球出身で、地球人なんですよね?」 「は?」 さらに訳が分からなくなった。 いくら正体が闇生物とはいえ、自分は人間の姿をしているのだから地球人なのは当然だろう。 シャッハの話の内容が理解できなかったが、一応問いに答えることにした。 「当たり前だろう。俺は地球人だ。まるでここが地球ではない別の星で、あんたは地球の人間じゃないようないいぐさだな。」 「その通りです。」 「は?」 「この世界はミッドチルダ。貴方が居た地球とは、別の次元世界です。つまり私は、ミッドチルダのミッド人という訳です。」 「な、何だと!?」 黒岩は思わず声を張り上げた。 流石の彼も、冗談で言ったはずの台詞に冗談のような回答が帰ってくるとは思っていなかった。 だがよく考えてみると、そんなに驚くほどのことでもなかった。 自分達ダークザイドも、闇次元界という地球とは異なる世界から、滅びた闇次元界の変わりに地球に移住するという目的のために地球にやってきた。 自分達が住んでいた世界のことを考えれば、地球でも闇次元界でもない世界が存在してもなんら不思議ではない。 「…そうか…異世界なのか…」 「?、案外簡単に納得されるんですね。もっと混乱したり、「嘘をつくな」と笑い飛ばされると思っていました。」 「確かに驚いたが、その…俺はそういう異世界についての知識も多少持ち合わせているんでな、派手には驚かん。」 「異世界についての知識ですか…それより単刀直入に聞きます、地球に帰りたいですか?帰すだけなら、簡単に出来るのですが…」 「…いや、帰るつもりは無い。」 黒岩は今更地球に帰る気は無かった。 悪の脆さを知り、皇帝になって世界を統べること以上に大きなモノを握った彼にとって、もう地球を支配する気もシャンゼリオンと決着を付ける気も無かった。 愛するエリにさえ、彼女の今後のことを考えると会わない方が良いと思えた。 「黒岩さんは、故郷に帰りたくないんですか?いろんな次元漂流者を見たことがありますけど、帰れる故郷に戻りたくないなんていった人間は黒岩さんが初めてです。」 「そうか…頼みがある。仕事を探したいんだが、何処かに職業安定所はないか?」 黒岩は人間への支配欲もシャンゼリオンへの闘争心も湧き上がってこない今、どうせ異世界に来たならこの世界で生き、この世界で働き、この世界で死んで行こうと思った。 この世界にはシャンゼリオンもザンダー達幹部も居ない為、シャンゼリオンに今まで受けた仕打ちの仕返しとして決着を挑まれる事も、ザンダー達と関わり、戦いを強要されることも無いため、ひっそりと生きるには丁度良い場所だと思えたからだ。 自分を待ち続けているだろうユリカにも、謝るために会うつもりは無かった。 彼女は黒岩の強さに惚れ込んだ女性だ。 黒岩が皇帝として君臨することを望む彼女にとって、皇帝であることを辞めた自分の姿を見せて幻滅させる気にはなれなかったからだ。 それにもし謝りに行ったとしても、自分が愛していた黒岩のイメージを粉々に砕かれ、狂乱するのは目に見えている。 だから彼女のためにも、このままそっとしておこうと黒岩は思った。 「仕事?この世界で働きたいんですか?」 「地球には少し嫌な思い出があってな。戻りたくないんだ。」 「そうですか…なら一つ聞きますけど、カウンセリングの仕事の経験はありますか?」 「え?あ、ああ。経験どころか、俺はそれが本業だった。」 黒岩は地球では東京都知事に就任する前は「黒岩相談所」というダークザイドのための相談所を開いていた。 ダークザイドの目的は、人間社会に紛れ、「人知れず密かに」を掟とし、人間の生体エネルギー・ラームを吸い取って種族の保存のために生きていくことであった。 だが、人間社会に密かに隠れながら行動しなくてはいけないダークザイドたちの中には、人間社会の厳しさに苛まれ、仕事に嫌気がさしてアルコール中毒になった者、人間関係の悪さから胃に穴が開いた者、ノイローゼとなり自殺した者などが少なからずおり、不満を溜めて掟を破り、大掛かりに人間を襲おうとしている闇生物達が大勢居た。 黒岩の仕事は、それらの悩める闇生物達の相談に乗り、アドバイスをしてやることだった。(後の世界征服計画のため、東京都知事当選の票稼ぎに彼らを利用するという裏の目的があったが。) このアドバイスで助けられたダークザイドの数は多く、黒岩も自分のカウンセラーとしての能力には自信を持っていた。 なのでカウンセリングと言う仕事は黒岩にとって得意中の得意だ。 そして黒岩の「本業だ」という言葉を聞いたシャッハは、目を輝かせて右手でガッツポーズを作った。 「なら!ちゃんとした仕事があります!悩める人々を助ける、崇高な仕事です!」 「何?…」 「どういうことだ?」と黒岩が台詞を続けようとしたときだった。 「ちょっとシスターシャッハ!探したよ~!二時間も何処にいたの!?」 シャッハと同じローブを身につけ、水色の髪をした少女が医務室の中に入ってきた。 彼女は怒った表情をしながら、シャッハに近づいてくる。 「あ、セイン!」 「騎士カリムが呼んで…あれ?」 シャッハの隣まで歩いた所で、セインと呼ばれた水色の髪の少女は、上半身に沢山のガーゼを貼り付けている黒岩に気付いた。 「うわ!凄い怪我…てか、アンタ誰!?」 「紹介します。黒岩省吾さんです。怪我をして庭園に倒れていたところを、私が助けたんですよ。」 シャッハは見慣れない男性の痛々しい姿に驚いているセインに、黒岩のことを紹介した。 黒岩はいくら命の恩人とはいえ、知り合ったばかりの女性に自分のことを他人に紹介されるのは何か可笑しな感じがしたが、特に口に出すことはしなかった。 「そうなんだ…う~ん…」 セインはくりくりとした丸い目で黒岩の顔を覗き込む。 そしてしばらくしてから顔を離すと、腕を組んだ。 「中々良い男ジャン。もしかして、シャッハの彼氏か何か~?」 「な!?」 セインは目を細め、すこしやらしげな声を出してシャッハをからかい、シャッハはそんな彼女のからかいに見事引っかかって頬を染めた。 「セイン!何言ってるんですか!?」 「ははは!ごめんごめん!でも、そんなにムキになって否定するって事は…」 「セイン~!!」 シャッハは腕をまくり、椅子から立ち上がる。 厄介事に発展すると察した黒岩は、話がこじれる前に仕事の内容を聞くことにした。 「おい、話の続きをしろ。」 「ああ!?そうでした!すみません…こんなからかいに反応するなんて、まだまだ未熟でした…」 シャッハは慌てて黒岩の方を向いて頭を下げた。 彼女のこの愚直なまでの丁寧な態度に、黒岩はシャンゼリオン・涼村暁の相棒である速水克彦、またの名をザ・ブレイダーの姿を重ねた。 楽観的な暁と真面目な速水は絵に描いたような凸凹コンビで、いつも性格の違いから衝突が絶えなかった。 だが衝突が多かったからこそ、二人の結束の力は強く、その力に敵う闇生物は存在しなかったのだと今の黒岩には分かっていた。 「仕事の内容ですが、黒岩さんにはカウンセラーとして、このミッドチルダの首都・クラナガンに相談所を設け、悩める人々を救って欲しいんです。」 「何だと…?」 ∴ それから二週間ほどが過ぎた。 「最近、妻や子供の私への対応が冷たいんですよ…私が帰ってきても挨拶はそっけないし、夕食も温めなおそうとはしない… それどころか!妻は私と口を聞こうともしてくれないんです!それに、四歳になる私の子供ですら、「パパ大嫌い」と言って、私に近づいてすらくれないんですよ! 私が何悪いことをしたって言うんですか!休暇も惜しんで、貧しい家庭のためにと汗水垂らして働いているのに!なんであんなにそっけない対応をされるのか…」 ソファーに座った中年の無精ひげを生やした男性は、目尻に涙を光らせながら嘆いた。 そんな男性の向かい側のソファーに座った黒いスーツとネクタイを身につけた男・黒岩省吾は、吸っていたタバコを灰皿にこすり付けて火を消し、吸殻をそのまま灰皿の中に捨ててソファーから立ち上がった。 「おそらく、貴方のご家族が貴方に冷たいのは、貴方がそうやって仕事に熱中しすぎるのが原因だ。」 「な…なんですって!?」 男性は涙を拭い、黒岩の目を見た。 「おそらく、貴方が家庭が貧しいからという理由で休暇を取らず、働いてばかりで家族の相手をしないので、貴方のご家族は貴方に失望し、貴方に冷たくなったのだと、私は思いますよ。」 「そういえば…今年はまだ何処にも家族で出かけてないし、子供への誕生日プレゼントも渡してない…」 「貴方は少し仕事を休み、ご自分のご家族に家族サービスをしたほうがいい。そうやって家族と触れ合えば、荒んだ家庭環境も修復できるはずだ。」 「は…はい!でも…私にはお金が…」 「別に旅行に行ったり、高い玩具を子供に買ってあげるのだけが家族サービスではありません。 どこかの大きな公園や山へのピクニックでも、プレゼントは安いお菓子の詰め合わせでもいいんです。 貴方が心を込め、自分に出来る精一杯の家族サービスをすれば、貴方のご家族だって貴方を見直し、今の冷たい関係を暖かい関係に修復できるはずです。 もちろん、貴方の心からの笑顔も忘れずにね。」 「ありがとうございます黒岩さん!では…さようなら!」 男性はさっきまでの沈んだ表情とは一転した笑顔で黒岩に頭を下げ、室内のドアに向かい、もう一度黒岩のほうを向くと一礼するとドアを開けて出て行った。 「ふう…今日はこれで五件目か。」 黒岩は溜息をつくと、所長用のデスクの椅子に腰掛けて新しいタバコを取り出し、咥えて火を点け、吸い始めた。 二週間前、黒岩は聖王教会のカリム・グラシアの手引きでビルの一室を借り、新たな「黒岩相談所」を開き、カウンセラーとして働いていた。 今ミッドチルダには、仕事の厳しさから過労死する者、家庭環境の崩壊から殺人事件に発展したり、家庭内暴力を振るう者、不景気で仕事をリストラされた者の増加に悩まされていた。 本来それらの人々を助けるための政策を行うはずの時空管理局は、海と陸の両部隊の管轄問題など、武力についての問題について協議を続けるのに精一杯で、そう言った人々への救済が追いついていない。 せめて人々の悩みを聞き、アドバイスを与えるカウンセラーが必要であったが、そのカウンセラーの数も全く足りていなかった。 なので黒岩のように、異世界とは言えそれを本業として活動していた人間の力は、喉から手が出るほど欲しかったのだ。 黒岩も慣れた仕事が出来るならこれは好都合と思い、シャッハの紹介した仕事で働くことを決めたのだった。 「まだ昼過ぎか…まだまだ相談者は来そうだな。」 黒岩は吸ったタバコの煙を吐いて呟きながら、デスクの傍に設置した小型液晶テレビのスイッチを入れた。 丁度ニュース番組が放送していて、それに目を通す。 内容はニュース速報、現在の株価など、地球となんら変わりない平凡なニュースだ。 黒岩はシャッハに、このミッドチルダについて、そして時空管理局についての事を相談所を始める前に聞いていた。 ミッドチルダは魔法文化が発達した国で、時空管理局に所属する武装局員達はその魔法を武器として駆使し、ミッドチルダを守る地上部隊と次元世界を守る次元航行部隊(この世界では「海」と呼ぶらしい)に分かれ、無限に存在する世界を守るために時空犯罪者を取り締まったり、ロストロギアと呼ばれる古代の危険な遺産を回収したりしているらしい。 聖王教会とは、ミッドの大きな宗教団体のようなもので、管理局を全面的にサポートしているようだ。 だが、黒岩は管理局を良く思っては居なかった。 評論番組などで評論家や管理局の将官達が「地上部隊は行動が遅い。これでは事件や災害で助かる命も助けられない。」「海の連中は優秀な人間ばかりを引き抜いてばかり。だから地上の守りはおろそかだ」という論議を繰り広げるたびに「馬鹿馬鹿しい」と感じた。 どんなお題目を並べても結局彼らが行っていることは責任の擦り付け合い、手柄の取り合いだ。 自分達が優位に立つことばかり考え、一番に考えるべきはずの庶民のことなど二の次にしか考えていない。 ダークザイドの騎士であった昔の自分なら地球と同じように、今にでもこの世界を征服し、ダークザイドの支配する世界へと作り変えようとしていただろう。 だが、そんな意欲も今はわいてこない。 黒岩にとって今大事なのは、全てを忘れ、ミッドチルダ人黒岩省吾として第二の人生をスタートすることだった。 「今の俺には何も関係ない。余計なことは考えず、ひっそりと生きていこう。」 黒岩は自分に言い聞かせると、ニュースを見続けた。 そしてニュース番組が終わり、朝の連続ドラマの再放送が始まったと同時にインターホンが鳴り響いた。 午前中から働きづめだった黒岩はできるなら一人でドラマを見て居たい気分だったが、もし仕事の依頼なら断れないため、客を入れることにした。 「どうぞ。」 「は~い♪」 「お邪魔します。」 相談所のドアが開くと、セインとシャッハが入室してきた。 客だと思っていた黒岩は少し落胆した。 これが客ならテレビ画面の前に座れず、客への対応を考えながらでも落ち着いてドラマの内容を聴けるが、やかましいやり取りの多いセインとシャッハの場合、テレビ画面の前に座れたとしても落ち着いてドラマが聴けないからだ。 彼女達はたびたび黒岩の様子を伺いに来る。 黒岩は「途中で仕事を投げ出すことはないからいちいち来なくてもいい」とは言っていたが、シャッハ曰く、「助けた人の働きぶりをよく見なければ折角助けた私も満足しない」らしいので、彼女はセインを連れてよくここを訪れていた。 煩い女だとは思ったが、命を助けられたと言う立場上、突っ返すことはしなかった。 「シャッハ…それにセイン…またあんたらか…」 「またとは何よ~!折角来たんだから、コーヒーくらい出しなさいよ~!」 「セイン!」 シャッハはセインの我侭な一言に腹を立て、彼女の頭部に空手チョップを見舞った。 「痛った…何すんのよシスターシャッハ!」 「マナーが悪いです!いくら私達がお客とはいえ、聖王教会の修道女がコーヒーをねだるなんていうはしたない真似がどうして出来るんですか!」 「冗談だって!ったくクソ真面目なんだから…」 セインはシャッハから顔を背けて口を尖らせた。 セインとは医務室で会ってはいたが、詳しく彼女と話し合ったのは相談所がまだ出来る前、聖王教会本部に数日間身を寄せていたときだった。 彼女は明るく楽観的な性格で、シャッハと違い、自分の薀蓄を聞くのは苦手なタイプだった。 黒岩はシャッハが女版速水克彦なら、セインは涼村暁の女版だと思っていた。 もちろん、彼女は暁と違って金遣いは荒くなく、人を傷つけるような発言はしなかったが。 「だいたい貴方はいつも…」 「ああもう!うっさいから説教は止めてよ!」 「う…うっさい!?セイン!口の聞き方に…」 「おい、静かにしろ。今やっと時間が空いたんで、ドラマを楽しんでいるところだ。」 そう言っても数分後にはまた二人の言い争いが始まるのだが、例えその場しのぎでも静かにしてもらいたかった。 この二週間、まともな休憩時間が合ったことは少ない。 管理局も軍備の話ばかりではなく、失業者や悩みを持つ者達のために、自分のようなカウンセラーの増加や景気の安定を考えろとなんども心で文句を言ったことがある。 なのでどれだけ無駄なのかは分かっていても、休まる時間がある時くらいは静かにして欲しかった。 「ドラマって、そんなの夕方にも再放送やってるじゃない。そんなのにかまけて、大切なお客様にコーヒーの一杯も出さないなんて…」 「セ~イ~ン~!」 「だって黒岩さん、命の恩人に向かって何の感謝も示してないんだもん。」 「貴方は何もしてないじゃないですか!それに、命を助けたからって生意気な口を聞くというのは修道女として…」 黒岩は溜息をつき、ドラマを見ながらまたその場しのぎの注意を行おうとしたときだった。 「ん?」 テレビ画面の上端に、「ホテル・アグスタでの従業員、利用客行方不明、三十人を突破」というテロップが表示された。 「おい、シャッハ!」 「あ…は、はい!」 「これは何だ?」 黒岩はテレビ画面をシャッハのほうに向けて回し、表示されたテロップを指差した。 忙しいとはいえニュースは見ていたが、こんな事件は聞いたことが無い。 「ああ…それですか…遂に隠せなくなったんですね…」 「どういうことだ?」 「はい、実は…」 シャッハはこの事件についての説明を始めた。 この事件が起きたのは二週間前、ちょうど黒岩が相談所を開いた頃だ。 ミッドチルダでも高級ホテルの一つであるホテルアグスタで、二人の男性利用客が姿を消した。 すぐに捜査班が編成され、ホテル周辺をくまなく探したが、失踪した二人は遺体も見つからなかった。 管理局と協力関係にある聖王教会側は反対したが、管理局地上部隊は徹底的な捜査を行って遺体も見つけられなかった事への責任追及と糾弾を逃れるため、この不思議な事件を内密に捜査をしようとしたために公のニュースにはならなかった。 だが、それ以降も犠牲者が増えすぎたため、事件を隠し通せなくなったのだという。 ちなみに犠牲者の共通点として、消えた人間は皆ミッドでも有数の大富豪だということが上げられている。 「…これが事件の全容です。」 「…そうか。」 黒岩は顎に手を当て、親指で数回なぞると、テレビのスイッチを消した。 「あれ?見ないの?」 セインが顔を覗いてきたが、黒岩の意識はその不思議な事件にあった。 遺体が全く見つからない大富豪と言う共通点がある犠牲者たち… 黒岩は「遺体が見つからない」「被害者には共通点がある」という二点の事件の特徴に焦点を絞り、事件の真相について考えてみた。 この二点の特長は、自分がよく知っている者達が行う行為と似通っていたからだ。 そして、その答えはすぐに導き出された。というより、事件の特徴から導き出される答えは黒岩の中では一つだけしかなかった。 「まさか…!」 黒岩は驚きの色を顔に表し、椅子から勢いをつけて立ち上がった。 この事件の真相は高い確率でダークザイドの仕業だ。 なぜこの世界にまでダークザイドが居るのかも、考えてみれば不思議ではなかった。 自分達ダークザイドは全てが地球に移住してきたわけではない。 地球への移動中に次元の狭間に飲み込まれ、姿を消した闇生物達も数多く存在する。 もしそれらの闇生物たちがこの世界に逃れてきているのなら、或いは… 「…今日はこれで仕舞いだ。」 黒岩はドアの方に向かい、隣にかけてあった本日休業のプレートを手に取った。 「黒岩さん?」 「どうしたのよ?」 「そのアグスタというホテルへ…案内しろ。」 黒岩はシャッハとセインの二人に事件の場所であるアグスタへの案内を頼んだ。 本当はこのまま傍観することも出来た。だが出来なかった。 もしこれが本当にダークザイドの仕業なら、自分にも無関係ではないと思えたからだ。 そして自分はこの世界でカウンセラーとして生涯生きていくのか、もしくはこの世界に迷い込み、隠れて生きていかなくてはいけないダークザイド達のために再び皇帝として立たなければならないのか、どちらを選ばなければならないかがこの事件の向こうにある気がしたからだった。 プロローグヘ 目次へ 一話Bへ
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魔法少女リリカルBASARAStS ~その地に降り立つは戦国の鉄の城~ 第十話「龍と雷光」 忠勝は優しき雷神、フェイトの武器、バルディッシュによく似た大剣を振る。 振る度に量産型は爆発。残るは数体。 だが、その数体を大剣で一掃しようとはしなかった。大剣を黒い宝石に戻すと。地面へと降りる。 (ヴィヴィオを救うにはやはり突入か・・・!!) 今度は金色の宝石を取り出すとその腕を天に掲げる。目の色から金色から雪の如き白へ。 宝石が光り、杖へと姿を変えた。 「あの杖って・・・!」 「シュベルト・・・クロイツやて・・・・!?」 その杖は最後の夜天の王、八神はやてが手に握る杖「シュベルトクロイツ」に似ていた。 忠勝は両手で杖を構えると十字の先の部分から白い稲妻が発生。稲妻は異様といえるほど大きくなる。 刹那、その大きすぎる稲妻は量産型とガジェットドローンを巻き込みながら聖王のゆりかごへ迫る。 案の定展開してあった結界にぶつかる。それでも忠勝は諦めない。叫び声にもよく似た鋼の唸るをとが響く。 大きな爆発の後結界が一箇所だけ見事に割れ、潜入できるほどの穴ができていた。 「・・・・忠勝さん!なのはちゃんとヴィータちゃんと一緒にゆりかご内部へと潜入!フェイトちゃんは先ほどの指示通りにスカリエッティの研究所へと潜入!」 指示された皆は頷くと、それぞれの場所へと飛ぶ。戦いはまだ、続く。 「ぐはぁぁぁっ!」 その戦場から少し離れ、吹き飛ばされたのはエリオだ。壁をぶち抜いてビルの中で倒れこむ。 吐血するエリオだがガリューは容赦なくエリオの腹に蹴りを入れていく。 「ぐふっ・・・!!」 「エリオ君っ!きゃあぁ!」 エリオの方に注意が逸れたところをルーテシアにつかれ、攻撃されるキャロ。 しかしルーテシアやガリューの方も優勢とはいえ次第に体力を奪われていく。そう、エリオとキャロのガッツで。 だが召喚のほうに問題がある。フリードリヒは今巨大な龍となってルーテシアの召喚虫を蹴散らしているがキリがないのだ。 おまけに地雷王という巨大なのもいるし、ルーテシア達の後ろでヴォルテールと戦っている白天王というのもいる。 「く・・・!」 エリオは槍を杖代わりにして立ち上がるがすでに満身創痍。 キャロも同じような状態である。 「ルーちゃん!私のお話を聞いて!」 「・・・消えて・・・!!」 ルーテシアは再び魔力を放つ。魔力に襲われ吹き飛ぶ二人。その足元には蒼い渦だった魔方陣が。 「え・・?キャロ・・・・これ!!」 「魔方陣・・・!?」 その瞬間晴天のはずの空から稲妻が落ちる。 稲妻の落ち方は尋常ではなく、何本もの稲妻が一本に集結、大きな一本となって落ちてきたのだ。 「Ha!楽しそうなpartyじゃねぇか・・・・!俺も混ぜろや・・・・・!」 そこには、一人の蒼い侍が立っていた。 蒼い侍は腰に挿していた六本の刀を片手に三本ずつ構える。 「さぁ行くぜぇ!イカレたパーティの始まりだ!Let s rock!!」 ━━━━"The dragon without the right eye" runs(「右目の無い龍」は走る。) ━━━━The sword that it is called "the nail of the dragon" to grasp in the hand.(その手に握るのは「龍の爪」と呼ばれる刀。) ━━━━"The dragon" infringes upon an enemy as far as there is a fight there and cuts it down.(「龍」はそこに戦いがある限り、敵を蹂躙し、切り倒す。) ━━━━Orbit of the lightning that it is blue that a nail weaves. But the blue does not have the cloudiness.(爪が織り成すのは蒼い稲妻の軌道。だが、その青に曇りはなく。) ━━━━And the dragon gives its name.(そして龍は名乗る。) 「この奥州筆頭、伊達政宗を楽しませてくれるヤツぁ、ここにいねぇのかい?」 奥州の龍、伊達政宗推参、その背後には斬り捨てられた召喚虫の群れ。 だがその中の一匹が立ち上がり、腕を振るう。腕は当たることなく、「龍の右目」に防がれた。 「政宗様、背中が隙だらけとあれほど・・・・!!」 ━━━━To a dragon without the right eye, there are the right eye and a man to be able to invite.(右目の無い竜には、右目と呼べる男がいる。) ━━━━The man did not have the nail of the dragon, but there was scathing brightness of the eye named the sword.(その男に龍の爪はないが、刀という名の鋭い眼光があった。) 「あぁ?俺の背中はお前が守るんじゃなかったのか?」 「無論、この片倉小十郎。命を賭けて政宗様の背中をお守りいたします!」 「Coolじゃねぇか。それでこそだ。」 槍使いの少年と龍使いの少女の前に現れたのは、一匹の「龍」だった。 「小十郎、俺は黒いあいつと戦う。他のは任せたぜ。」 政宗はガリューへと目標を変え、走り出す。すぐにぶつかり合う刃と刃。ガリューは背中から生えた触手で政宗の腹を打ち、吹き飛ばす。 ビルに突っ込む政宗だが体勢を立て直してまた突撃。顔は、笑っていた。 「やれやれ、困ったお方だ・・。さて・・・嬢ちゃん、俺はできればアンタと戦いたくないんだが・・・?」 小十郎は刀を肩で背負い、ルーテシアを見据える。 ルーテシアは小十郎の問いかけにも答えず、魔力の球を撃ち出す。 素早く刀を前に突き出して球を斬る。真っ二つに割れた球はかなり後方で爆発。 「こっちも困ったやつだ・・・。流石に斬るわけにはいかねぇけどな。」 そう言って刀を反す。にらみ合いが続く中で何かを思いついたように後ろにいるエリオに声をかけた。 「おい、そこの坊主。」 「は、はいっ!?」 「ちょいと手を貸してくれねぇか?作戦があってな・・。」 小十郎はエリオに背を向けたままできるだけ小声で話す。 「Hey!よーく耳を澄ませな、俺の心臓はここだぜぇ?」 自分の左胸を親指で指し、ガリューを挑発する。ガリューはそんな挑発に乗るほど短気ではない。 じっとしてたら政宗が接近、三本の刀で斬り上げる。 「!」 攻撃を防御するガリューだが政宗の攻撃は終わりじゃない。そのまま空中に上がり、もう片方の三本の刀を振り下ろしてくる。 「DETH FANG!!」 その攻撃も防御したが明らかに先ほどの斬り上げより重い。すこし手が痺れ、震えている。 自分も負けてはいられない。触手をまた政宗の腹に打ち込むと今度はそのまま接近。手首についた刃を突き出す。 ギリギリのところで避けたから兜の緒が切れ、兜が地面に落ちる。 「ヒュウ、やるねぇアンタ。」 「・・・・。」 また刀と刃のぶつかり合いへと変わるが、直ぐに両者は離れた。 政宗は片手に六本の刀を持ち、ガリューへと接近。六本の刀を横に凪ぐ。 「PHANTOM……」 「!!」 横凪ぎは今までの政宗の攻撃を遥かに凌ぐ重さ。ガリューの体が浮いた。政宗はジャンプし、ガリューへと迫る。 手には六本の刀。六つの斬撃が、ガリューの体に向けて振り下ろされた。 「DRIVE!!」 その四肢は宙を舞い、地に落ちる。刀を仕舞い、倒れているガリューへと言葉を送る。 それは一言だけだったが今の気持ちを伝えるには十分な言葉。 「楽しかったぜ。」 「……というわけだ。いけるか?坊主。」 「はい、やってみます。」 エリオは立ち上がり、ストラーダを再び構える。 小十郎はその隣に立ち、腰を落とす。ルーテシアは何もしないままだ。 静寂が場を支配する。何も動かず、聞こえるは風の音と自らの心臓の音。静寂は十秒、五十秒、一分。長く続く。 先に動き出したのは小十郎だった。一歩踏み込み、二歩目で地面を思い切り蹴る。 刀を前に突き出して蒼いオーラを纏いながらルーテシアに突進していく。 「穿月!」 穿月はルーテシアを捕らえることはなく、横を通り過ぎる。 「うおぉぉぉぉ!」 小十郎のあとに続きエリオがストラーダを構え、突進してきていた。ルーテシアは思わず飛び退くがエリオは止まる。 ルーテシアが飛び退いた先に小十郎がいた。刀を上に掲げ、肩と首を叩くと気絶。その場に倒れこんだ。 「今は静かに眠れ・・。」 刀を鞘へと納めると同時に政宗が近づく。どうやら終わったようだ。 エリオとキャロが近づき、少し戸惑いながらも二人の武将の前に立つ。フリードリヒもキャロの近くに降りてきて元の小さい竜へと戻り、 ヴォルテールの方も決着がつき、消える。白天王を含めた召喚虫はルーテシアが気を失ったと同時に消えてしまったみたいだ。 「あの、ありがとうござい・・・」 「おっと、礼はまだだ。オメェらにはまだ行かなきゃならねぇ所がある。だろ?」 言い切る前に政宗が喋る。言葉に対してエリオとキャロが頷くと政宗と小十郎は顔を見合わせて微笑。 フリードリヒの上にルーテシアを乗せ、四人はゆりかごへと走り出した。 戻る 目次へ 次へ
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襲撃から一夜開け、被害を免れた一部の地上本部局員は本局と連携をとり事態の収拾に着手していた。 そして、その甲斐があってか崩壊した機動六課隊舎の瓦礫を早急に除去、避難シェルターの入口を発見し無事救助 更に近くに倒れていたフォワード陣もまた早急に聖王医療院へと搬送された。 一方でスバルの後を追っていたティアナは右腕に怪我を負って倒れているスバルを発見、 ティアナは傷口を見るや否や先端技術医療センターと連絡を取り、その後に現れた搬送車によって搬送、ティアナも同行者として乗り合わせた。 そしてなのはの身を案じていたフェイトは医療院に辿り着くと、うつ伏せの状態で倒れているなのはを発見、 すぐさまなのはを抱え医療院に向かうと院内ではヴァイスとシャッハが治療を施されてる姿があり、 フェイトは二人から事情を聞き、ヴィヴィオが攫われた事を知るのであった。 リリカルプロファイル 第二十二話 扉 …事件から一週間が経ち、ミッドチルダ全土は今回の事件で持ちきりな状態が続いている。 マスメディアの一部はスカリエッティの所業、管理局の失態などを取り扱っているが、その多くは最高評議会の声明を取り扱っていた。 最高評議会は神の三賢人と呼び名を変え、巨大な次元航行船ヴァルハラにてミッドチルダ全土を破壊すると宣告した。 つまり“未曾有の危機”は彼等三賢人の手によって起こされるという事を指し示す声明である。 その事をマスコミは管理局には責任があると報じるが、管理局側は今回の事件は最高評議会の独断による声明で、我々管理局の意向ではないと表明した。 そしてその意を民衆に伝える為、三賢人が関わる事件に関わった人物の逮捕に勤めていた。 今まで三賢人に関わる事件は改ざん、削除、抹消されていたのだが、 ある男の死によって無限書庫に存在する事件簿の情報が復活を遂げ、その情報を基に次々と逮捕する事が出来たのである。 そして今回の逮捕劇の要であるこの情報は功労者の名を取りレジアスレポートと呼ばれるのであった。 話は変わり此処聖王医療院の通路に右手には花束、左手にはフルーツの盛り合わせが入ったバケットを携えたフェイトが歩いていた。 フェイトは今回の事件で負傷・入院をしたエリオとキャロ、そしてなのはの見舞いに来たのである。 そして暫く通路を歩きエリオとキャロの病室に入るフェイト、 二人は窓側にキャロ、その隣にはエリオと並ぶように位置をとっていた。 『フェイトさん!!』 「二人共、お見舞いにきたよ」 そう言うと花瓶に花を生け、台にバケットを置くと二人の間に座るフェイト。 二人はフェイトの顔を見て明るい表情を見せるが、すぐに暗い表情を覗かせる。 二人は今回の戦闘で大きな傷を残していた、それは肉体ではない心の傷である。 ――元々…アナタ達に居場所なんて無いでしょ…―― 二人が対峙した少女、あの少女が放った言葉が今でも二人の心に深く刺さっている。 居場所……二人の居場所である機動六課隊舎は既にもう無い、それは即ち自分達の居場所はもう無いという意味と同義であると考え落ち込む二人、 すると二人の表情を見たフェイトは、椅子から立ち上がり二人に近づくと優しく頭を撫でる。 「大丈夫、私は此処にいる、二人の“居場所”はちゃんと此処にあるんだよ?」 フェイトの言葉に二人はフェイトの顔を見上げる、二人は何も一言もフェイトに胸の内を話してはいなかった。 しかしフェイトにはちゃんと二人の気持ちを理解していたのだ。 そしてフェイトは言葉を続ける、確かに隊舎は無くなってしまった。 でも“居場所”とは自分が“居る場所”だけを指し示している訳ではない、 自分が安心する・出来る所、つまり“拠り所”という意味も指し示していると優しく語る。 「…それとも私じゃ、二人の“拠り所”になれない?」 『そんなことありません!!』 二人はフェイトの問い掛けに声を合わせ力一杯否定する、自分達が此処にいるのはフェイトさんが拾ってくれたから、 もしフェイトさんと出会わなければ、自分達はずっと施設に居たかも知れない。 そう二人はフェイトに感謝の弁を述べると、自分達の心からある感情が湯水のように沸き上がる。 …自分達にはフェイトさんという“居場所”が“拠り所”あるんだ! そんな喜びと安堵の感情を感じた瞬間、二人の瞳から一筋の涙がこぼれ落ちる。 「あっあれ?……悲しく……ないのに…何で?」 「…人は安心した時にも…涙が出るんだよ?」 「…うぅ……フェイトさん!!」 フェイトの屈託のない笑顔に二人はフェイトの胸の中で泣き続け、二人の涙をその胸で優しく受け止めるフェイトなのであった。 そして二人は泣き疲れ眠りにつくと、フェイトは次の目的地であるなのはの病室へと赴く。 その時、向かい側からシグナムが姿を現す、どうやら同じく入院しているザフィーラとシャマルの見舞いを終え、 今度はヴィータの見舞いに向かうところのようである。 フェイトは軽く挨拶を交わすとシグナムは少し影を潜めた表情で返し、フェイトはシグナムの態度に首を傾げる。 するとシグナムはフェイトに、医者に言われた事を話し始める。 シグナムは二人の見舞いに来たところ医者に呼ばれ、二人…と言うよりヴォルケンリッターに関する変化が伝えられた。 本来ヴォルケンリッターとは夜天の書の一システムで、 騎士内でのリンクや主であるはやてから魔力を供給される事で得られる、無限再生機能などが上げられるが、 それらの機能は初代リインフォースの消失によって薄まる、もしくは消失していった。 だが、それらの事は前々から分かっていた事なのであるが、 今回は更に肉体の再生能力が低下し人に近いレベルにまでに至っているという。 つまりは重傷や致命的な傷を負えば“死”が訪れると言う事だ。 だが人に近づいたとは言え、その治癒力は高く、寿命や肉体の成長は起きないと付け加えられたと話す。 「そうですか…皆さんにそんな変化が…」 「あぁ…だがまぁいいさ、せっかく手に入れた“一度きりの生”だ、有意義に楽しむつもりだ」 そして今回の内容をヴィータにも話すつもりであると、人に近づいたとは言え肉体は成長しない… ヴィータはさそがし悔しがるだろうと、意地の悪い顔をしながら笑みを浮かべるシグナム、 その笑みに頬を掻き苦笑いをするフェイトであった。 シグナムと別れたフェイトは、なのはの病室に辿り着きベッドに近づくと、その姿は見受けられないでいた。 するとフェイトはベッドの隣に置いてあるハズの松葉杖が無いことを確認、 恐らく“アノ”場所へと向かったのだろうと判断すると病室を後にした。 此処は医療院の屋上、此処にはブランコや滑り台、砂場などがあり、まるで公園のような造りをしていた。 そしてその場所に存在するベンチにて右側に松葉杖を置き、 右手にはレイジングハートを握り締めた病院服姿のなのはが座り空を見上げていた。 なのはは今回の事件で使用したブラスターシステムの反動により、肉体・リンカーコア共にダメージが蓄積、 魔力は最大値の8%も低下し、肉体も松葉杖がなければ動けない程なのである。 その為此処医療院にて治療兼リハビリを受けているのだ。 そしてなのはの姿を見かけたフェイトは優しく声をかける。 「やっぱり此処にいたんだ」 「あっ…フェイトちゃん……」 フェイトの声に気が付いたなのはは、顔を向けるがすぐに空を見上げる。 その反応にフェイトの表情は少し陰りを見せるもなのはの隣に座る、そして暫く静寂に包まれると一つの風が二人の髪を靡かせる。 その風に髪を乱されたフェイトは、指で髪を解くと、なのはの口が開き始める。 「…私、ヴィヴィオを護れなかった……」 小さくか細い声で言葉を口にすると目線を下ろし遊具を見つめる。 なのはの目にはブランコを漕ぐヴィヴィオや、一緒に砂遊びをしているヴィヴィオの姿が幻影の様に映し出していた。 そしてそれらが蜃気楼の様に消え去ると、今度は目線をレイジングハートに変え握り締めると、ゆっくりと話し始める。 自分はヴィヴィオと約束した、ヴィヴィオを絶対護ると。 そして自分のモットーでもある全力全開でレザードに立ち向かった、 しかし結果はなす統べなく倒され簡単にヴィヴィオは攫われてしまった。 なのはは自分の弱さを歯噛みするも、もう自分には何も出来ないと諦めに近い表情を見せ話し続ける。 するとフェイトはベンチから立ち上がりなのはの前に佇む。 それに気が付いたなのはは顔をフェイトに向けると、辺りに乾いた音が響き渡る。 なのはは痛む左の頬を押さえフェイトを見つめると、フェイトは怒りにも悲しみにも似た表情を表していた。 そしてフェイトの怒号ともいえる声が辺りに響き渡る。 「しっかりしてなのは!そんなの…なのはらしくない!!」 「フェイトちゃん……」 フェイトの怒号の後に風が一つ激しく吹き収まると、フェイトは話し続ける。 十年前、なのはは自分と何度も対峙した、決して諦めずに自分を救おうと、そして友達になる為にも… はやてが闇の書に飲み込まれた時、決して諦めず救おうとしていた、 そして闇の書を消し去る時も管理局の切り札であるアルカンシェルを地上に向けて発射する事に対して、 決して諦めずに策を練り見事、闇の書を撃破した。 八年前の撃墜の時も、二度と飛べないかもしれないと伝えられても、決して諦めずリハビリを受け見事に復活した。 そんないつも諦めない不屈の心を持つなのはが吐く台詞では無いとフェイトは叫ぶ。 「攫われたのなら取り返せばいい、私の知っているなのははそう言う人のハズ……」 「フェイトちゃん……」 フェイトの叱咤の混じった励ましに俯くなのは、暫く沈黙が辺りを支配し 風が二人の髪を靡かせると、なのはは俯いたまま静かに言葉を口にし始める。 「ヴィヴィオ…今頃泣いているかな?」 「そうだね…アノ子は泣き虫だから…」 フェイトはそう言うと俯いたまま一つ笑みを浮かべヴィヴィオを思い返すなのは… 最初ヴィヴィオに出会った時はシャッハにデバイスで脅され泣いていた。 機動六課で引き取った時、ザフィーラの大きさに驚き、ジクナムの顔を見て泣き出したこともあった、 シグナムが珍しく落ち込んでいたのは見物だった… 聖王教会にて話を聞きに向かおうとした時、ヴィヴィオが泣きながら離れず困り果てた事もあった、 あの時程フェイトちゃんがいて良かったと思った事はなかった。 そして…ヴィヴィオは今でも自分を探して泣いているハズである。 そんな時に自分が塞ぎ込むわけにはいかない、ヴィヴィオは自分を待っているのだから! するとなのはは松葉杖を手に持つと歩き始める、その行動に思わずフェイトは声をかける。 「何処行くの?」 「リハビリに行ってくる」 今自分に出来る事は先ず、この体を満足に動かせるようにする事 そう話すなのはの瞳には不屈の炎が宿っていた。 その炎を見たフェイトは、歩幅をあわせなのはの後をゆっくりとついて行くのであった。 場所は変わり此処はゆりかご内に存在するスカリエッティの施設… 部屋ではレザードとスカリエッティがチェスを嗜んでいた。 スカリエッティは今こそ落ち着いてはいるが、一週間前は荒れに荒れていた。 それもそのハズ、スカリエッティは綿密に立てた計画を実行に移し、計画は順調に進み見事地上本部を壊滅させた。 そしてその光景を民衆に見せつけ管理局の無力さをアピールする算段であったのだが、 最後の最後に事もあろうに三賢人に回線を乗っ取られミッドチルダ壊滅を宣言されたのだ。 三賢人はスカリエッティが行っていた計画をお膳立てとして利用し、ミッドチルダの終焉をアピール 更にはヴァルハラと言う次元航行船を見せつける事で、絶望感を与えたのである。 最も忌むべき存在である三賢人にまんまと利用されたスカリエッティはモニターを叩き割るほどに怒りに震え、 その後のメディアの対応に新聞を破り捨てテレビを消すなどと、怒り心身といった状態が続いていたのであった。 「もう、怒りは収まりましたか?」 「……正直、ハラワタが煮えくり返るほどの怒りは残っているが、その怒りは奴らと出会った時に発散するよ」 それよりも今はヴァルハラの分析が優先だとスカリエッティは話しつつ城兵〈ルック〉を動かす。 スカリエッティの見解では、ヴァルハラは此処ゆりかごとほぼ同格の能力を持っていると考えている。 何故ならば、かつて三賢人はゆりかごの解析の為スカリエッティを此処に送り込むが、 スカリエッティはゆりかごを奪取し、此処を拠点としたのだ。 本来では三賢人は奪取されたゆりかごを血眼で探すのが普通であるのだが、捜索は簡単に打ち切られた。 それには訳があったのだ、その頃には既にゆりかごに取って代わるヴァルハラを建造していたのだろう。 つまり、ゆりかごを諦める事が出来る程の能力がヴァルハラにはあるとスカリエッティは考えていた。 すると今度はレザードが話し始める、ヴァルハラが陽炎の様に消えた技術、あれはまさしくルーンによる物だと。 つまりヴァルハラにはレザードの世界の呪法が使われているという事である。 レザードの話ではルーンの一部にはレザードの世界でも失われた呪〈ロストミスティック〉と呼ばれるほどの呪式が存在する。 それらが使えているということは、レザードと同じ世界から来た者がいるか、もしくは情報を持っていることを指し示す。 「成る程、それは厄介だ、ところでナンバーズとタイプゼロの方はどうなっているんだい?」 スカリエッティの質問に対し眼鏡を動かし騎士〈ナイト〉を動かすと説明を始めるレザード。 先ずナンバーズであるが、ノーヴェは失った右足の治療を終え現在リハビリを行っている。 次にチンクであるが体に違和感を感じている為、医療ポットで治療、今はそれも終え元気に模擬戦を行っていると。 次に回収した戦闘機人を調査したところ、我々が造り出した戦闘機人とは全く異なり、人に近い造りをしているという。 そして失われた左手はギミックアームとして修理を施し、更に洗脳までも施したのだが、 只の洗脳ではなく心の奥底に存在する感情を利用していると語る。 「彼女の奥に潜む感情……それは自分が地味であるという事 即ち、彼女の地味な性格を利用する事により、もっと目立ちたいという感情を芽生えさせ その結果、派手な破壊工作を行う事が出来るのですよ……」 「…………それは…冗談かね?」 「…………当然、冗談ですよ」 手を広げ肩を竦めるレザード、その態度に頭を押さえるスカリエッティ、 レザードの説明はリアリティがありすぎると窘めると、レザードは眼鏡に手を当て本当の説明を行う。 彼女の根底にある感情、それは妹に対しての愛情、それを引き出すことにより他のナンバーズと連携をとれるようにしてあると語る。 論より証拠、取り敢えず見て欲しいと言わんばかりにレザードはモニターを開き、ナンバーズの様子を映し出す。 モニターにはナンバーズの一人、ノーヴェとギンガがリハビリを兼ねた模擬戦をしている姿や、 セインとウェンディと楽しく談話している様子、更にはオットーとディードと一緒に食事をとり、面倒を見ている様子が映し出されていた。 「………見事に順応しているね」 「えぇ、計画通りです」 ナンバーズには腹違いの姉……もとい生まれが違う姉と紹介したところ、以外とすんなり受け入れられた。 故に此処まで順応しているのだろう、と言うのがレザードの展開である。 「そう言えば聖王はどうです?」 レザードの質問に顔を曇らせるスカリエッティ、暫くすると大きくため息を吐き女王〈クイーン〉を動かし近況を報告する。 鍵であるヴィヴィオの肉体は幼くリンカーコアも弱い、其処でレリックを使って魔力を上昇させ、ゆりかごを起動させるだけの肉体と魔力を補うと話す。 するとレザードから一つの提案が生まれる、それはベリオンに搭載されているリンカーコアを使うと言うものだ。 だがゆりかごは聖王の“遺伝子”がなければ機能しないとスカリエッティが主張すると、更に話を続ける。 先程のスカリエッティの主張通り、ゆりかごを動かすには聖王の血筋、つまり“遺伝子”が必要である。 つまり別に聖王自身が必要というわけではない、“遺伝子”と言う鍵があればいいのである。 故にベリオンのリンカーコアと接続させたレリックからもたらされる魔力を、 “聖王の遺伝子”に通す事により“聖王の魔力”に変えゆりかごを起動させると言うものであった。 「可能なのかね?」 「理論上不可能では無いハズです」 リンカーコアとレリックの強制接続はゼストのデータを基に可能であり、 リンカーコアと“遺伝子”は人造魔導師と戦闘機人技術の応用で何とかなると、 そして“遺伝子”提供は鍵から手に入れればいいと眼鏡に手を当て話すレザード。 「……となると、あの“鍵”はどうするのかね?」 「まぁ、レリックウェポンとしても優秀ですから、戦力として使えるでしょう」 いざとなれば、ベリオンのサブとしても利用価値はあるとレザードは話す。 そしてレザードは笑みを浮かべ城兵を動かし、チェックメイトをかけるのであった。 それから一週間以上が経ったある日、此処聖王教会に存在する会議室では、今後の対策の為の会議が行われようとしていた。 会議室にはカリムを中心に右の席にはクロノとその側近であるロウファにユーノ、 左の席にははやてとその側近であるグリフィスにフェイトとリハビリにより、 体はある程度動けるようになったなのはの姿があった。 そして予定された時間になり会議が開始され、最初にカリムが語り始める。 今回、地上本部壊滅を防ぐことが出来ず、予言は覆らなかった。 更に三賢人の発言によりスカリエッティが“無限の欲望”であると判明、 それと同時にレザードが“歪みの神”であることは間違いないと話す。 そしてレジアスレポートにより復活した無限書庫に存在するデータベースにより、様々な事実が明らかにされたと語る。 そして議題は三賢人に関する内容に移り、ロウファが席を立ちモニターへと赴き説明を始める。 先ずはヴァルハラからの説明であるが、レジアスレポートを元に調査した結果、 ヴァルハラとはミッドチルダの魔導技術を基に、アルハザードの技術とロストロギアであるレリックを使った次元航行船であると言う。 レリックは本局と地上本部に保存されていた物を横流しする事により入手、 アルハザードの技術は三賢人が元々持っていた情報である可能性が高いと指摘、 だがアルハザードの技術の情報はレジアスレポートの情報だけではなく、“独自”のルートによる情報が功をそうしたとロウファは語る。 更にヴァルハラの性能は最新の次元航行船を大きく越えた性能を持つ、まさに現代の技術によって作り出されたロストロギアであると説明を終える。 次にエインフェリアであるが、此方にはルーンと呼ばれる技術が使われており、ヴァルハラと同じ扱いであると簡単に説明を終える。 次に今回の事件の発端でもあるスカリエッティに関する情報であるが、此方はグリフィスが席を立ち説明を始める。 今回の事件でティアナが入手したディスクとレジアスレポートの情報を基に奴らの場所を特定、聖王のゆりかごと呼ばれる次元航行船に存在すると説明する。 聖王のゆりかごとは、古代ベルカの王が使用していた質量兵器で当時は戦船と呼ばれた代物である。 「歴史的価値がある聖王のゆりかごが、このような形で表に出るとは悲しいことです」 「……その通りですね」 カリムの言葉に頷くユーノ、だがグリフィスは更に話を続ける。 ディスクの持ち主の話ではゆりかごにもルーンと呼ばれる技術が使われており、 ゆりかごの他にもヴァルハラ、エインフェリアの動力源に使われ、更には不死者の脳に刻まれた呪印もそうであるという。 このルーンの情報はレジアスレポートによって復活した無限書庫のデータベースを基に手に入れた魔導書によって解ったことである。 更に元々ルーンはロストロギアともアルハザードの技術とは異なる技術で、 無限書庫の奥深くに隠すように保存されていたという。 そしてこのルーンはスカリエッティ側、三賢人側、両方にもたらされている技術であることは間違いないと判断する。 「つまり…おんなじ技術が両方で使われているっちゅう事か……」 誰かが無限書庫の情報を横流ししたのか、それともただの偶然か… だがどちらにせよ、驚異である事には変わりがないと考えるはやて。 次に対策であるが、先ずカリムは居場所が特定されているスカリエッティの方から攻略を始めた方がよいと考えを述べる。 何故ならば予言を考慮すると三賢人は“神々の黄昏を告げる笛”が鳴り響くの待っている可能性があるためだ。 ゆりかごはルーンによって存在次元をずらされているのだが、無限書庫の情報により短い時間ではあるが、 ルーンを中和する事が出来ると判明、その間に潜入・大本であるルーンを解除するという。 その役はカリムの義弟であるヴェロッサと、彼が信頼する仲間が行うという。 次の対抗策であるが、戦力として教会騎士団も協力するとは言うが、一斉に黙り込む一同。 片方は現代の技術によって作り出されたロストロギアの塊で武装した三賢人… もう片方は過去に幾つもの世界を滅ぼしたロストロギアを保有した歪みの神と無限の欲望… この二大勢力に幾ら聖王教会から戦力を借りたとしても満身創痍の管理局が向かったところで勝ち目はない。 「本局に応援要請はでけへんの?」 「…本局は次に狙われる事を考慮して戦力を温存しようとしている、十中八九無理だな」 クロノの発言にそれぞれは落ち込む表情を見せる中、ユーノがそっと手を挙げる。 「現実的じゃないけど、手は無い訳じゃないんだ」 そういうと一つの本を取り出す、本の表紙には円に囲まれ中心には正三角形が均等に並ぶ魔法陣が描かれていた。 レジアスレポートによってもたらされた情報は何も最高評議会だけではない、 削除された為、永久的に解けなかった謎が解け、新たな情報に繋がる場合も存在していたのだ。 そしてこの本は、それによって表に出た本であると説明する。 無限書庫には二通りの情報の保存方法がある、先ずは物質による保存法つまり本である、 もう一つは無限書庫の奥の奥、原初の頃から存在する今でも解析不可能なエネルギーによる電子的な保存法である。 そして物質的な保存法であるこの本には特殊な力場によって時間劣化が起こらないように出来ているという。 恐らく表に描かれている魔法陣による効果であるとユーノは興奮するように説明すると、 周りの冷ややかな目線に気が付き、自重するように一つ咳をすると話を戻す。 この本の題名は流浪の双神と書かれ、ある神の話が書かれているとユーノは語る。 …双神は時間・世界・事象のあらゆる次元を渡り歩く放浪者… 神の名は男神ガブリエ・セレスタと女神イセリア・クイーン… 神は強き者を好み、自らが生み出した世界にて強き者を待っている… そして神が与えた試練を乗り越えた者のみ神と対峙する権利を得られる、 そして神にその強さを認められれば、神は力を貸すという内容なのである。 更にこの本には神の住まう世界セラフィックゲートへの扉の位置が記されているとユーノは語るとクロノが声を荒上げる。 「バカな!こんな世迷い言を信じろと?」 「僕も最初はそう思ったさ、でも此処に記載されている扉は実際に存在するんだ」 ユーノの一言に一同は動揺しざわめく中、話を続ける。 此処に記載されている場所の説明と今の地形、更にこの時代の地形を照らし合わせた結果、その場所は此処聖王教会の地下と判定、 そこでカリムの協力を得て調査すると近くに鍾乳洞があり、そこから地下数千メートルの位置に存在する空洞を確認、 其処には本の表紙に書かれている魔法陣が描かれていたという。 つまりこの本の信憑性が実証されたと言う事である。 神の世界への道は見つけた、次に誰が向かうのかであるが、はやては機動六課のフォワード陣を現地に向かわせる事を提案する。 しかしなのはだけには留守番をするように命じた、何故ならば未だ体が万全ではない為、治療に専念させる為にである。 しかし周りの制止を無視して自分も行くと聞かないなのは、 その瞳には決意と不屈の色が宿っており、はやてはこうなったなのはを止める事は出来ない考え、渋々了承する。 そして現場には明日向かうことで会議は終了、早速なのはとフェイトは今回の決議を他のフォワード陣に伝えるのであった。 その日の夜…、此処聖王教会の敷地内に存在する中庭にて、なのはが一人ベンチに座り物思いに呆けるように夜空を見上げていると、 そこに一つの影が姿を現す、なのははその影に気が付き目を向けると、其処にはユーノの姿があった。 「あっユーノ君…」 「お邪魔だったかな?なのは…」 ユーノの言葉に首を振り屈託のない笑顔を見せると、ユーノはなのはの隣に座る。 辺りは沈黙に包まれ、虫の鳴き声が静かに響き渡る中、静寂を優しく切るようにユーノの口が動き出す。 「……ヴィヴィオの事、考えてたの?」 「……うん」 ユーノの問いかけになのはは一つ頷くと静かに話し始める。 最初はあの男、レザードの言う通り同情の目でヴィヴィオを見つめていた。 しかし共に過ごしていく内に自分の心にヴィヴィオへの思いが広がっていった。 レザードはそれを同情から生まれたの優越感だと罵ったが、自分はそう思ってはいない。 自分の心に広がるヴィヴィオへの思い…それは絶える事無く募っていく。 自分の思いは本物である!そう確信した瞬間、心の底でヴィヴィオの母親になりたいと思うようになった。 そう語るなのはの目には迷いは無く、決心に満ちた色を宿していた。 「もう自分の想いに嘘をつきたくない!」 「そうか……それじゃあ僕も自分の想いに正直になろうかな」 「えっ?」 ユーノの言葉に驚き顔を向けると、ユーノの唇がなのはの唇に重なり合う。 暫く沈黙が続き唇を離すと、なのはは頬を染めユーノに目を向けると、 其処には男の顔をしたユーノ・スクライアの姿があった。 「なのは…愛しているよ」 「ユーノ……君」 「こんな時にこんな事を言うのは卑怯かもしれないけど…」 なのはが自分の想いに正直になったように、自分もまた、自分の想いに正直なろうと。 十年前に出会ってから、二人はそれぞれの道を歩んで来た。 だがそれでも自分は、なのはの支えとなろうと努力してきた。 なのはの支えになる…その想いは昔も、今も、そして未来も変わらない、 二人の絆が消える事は無い、寧ろ堅く結ばれていくのを感じている。 そして照れ臭さそうな笑みを浮かべ更に話を続けるユーノ。 「それに…ヴィヴィオには男親も必要だと思うし……」 そんな事を口走ると今度はなのはから目線を逸らし俯くユーノ、自分はヴィヴィオを盾にして告白する破廉恥な男と感じ恥じていたのだ。 そんなユーノの態度になのはは笑顔で、そんなことは無い…ユーノはヴィヴィオの為を思って言ってくれた言葉であると理解を示し、 更に顔を真っ赤に染め小さく頷くと意を決したように話し出す。 「ユーノ君…私を“女”にして」 そう言うなのはの顔は真っ赤に染まったままだが、その目は真剣そのものである。 レザードの話ではないが、自分は母親になる前にユーノの“女”になりたいと望んでいる。 その言葉にユーノは無言になるが、その目にはなのはと同じく真剣そのものであった。 その目を見たなのはは目をゆっくり閉じると、ユーノは優しく答えるように、なのはの肩を抱き締め 唇を重ね合わせ、二人だけの夜が始まり更けて行くのであった。 夜が明けた次の日、聖王教会によって割与えられた部屋のベッドの上には上半身裸のユーノのが寝ており、その近くではなのはが制服に着替えていた。 すると着替える音に気が付いたユーノが上半身を起こすと、それに気が付いたなのはが目を合わせる。 「あっ起こしちゃった?“ユーノ”」 「ううん、今起きようと思っていたところだよ、なのは」 二人は軽く挨拶を交わすと頬を赤く染め上げるユーノ、どうやら昨晩のことを思い出していたようである。 すると着替え終わったなのはが入り口に向かうとユーノに目を向ける。 「それじゃあ、行ってきます、ユーノ」 「うん、いってらっしゃい、なのは」 二人は挨拶を交わしなのはは部屋を出る、そして凛とした態度で集合場所に向かうのであった。 集合場所にははやてを中心にフェイト、シグナム、ヴィータ、ザフィーラ、シャマルに スバル、ティアナ、エリオ、キャロとフリードリヒが並び立っていた。 そして道案内にユーノの秘書を勤めているメルティーナの姿も見受けられた。 「なのはも来た事やし、いっちょ行ってみますか!!」 「うん!行こう、セラフィックゲートに!!」 なのはの合図に全員は気合いを込めて返事をし、いざセラフィックゲートへと続く空洞へと向かうのであった。 その道中、先頭を歩くメルティーナに続き、はやてとフェイト、少し離れた位置になのはの姿があり、二人はなのはの印象が変わったように見えていた。 いつものような優しい顔だけではなく、ふと見せる凜とした大人の顔が垣間取れていたのだ。 たった一晩で一体なのはに何が起きたのか?…二人は首を傾げていた。 「なのは、昨晩何かあったのかな?」 「さぁ?分からんなぁ~」 「彼女はきっと“女”になったのよ」 二人のヒソヒソ話に耳を傾けていたメルティーナが二人の疑問に答える。 その答えにはやてはニンマリと不気味な…イヤらしい笑みを浮かべ、フェイトはキョトンとした表情を表していた。 メルティーナの“女”の勘では、恐らく相手は十中八九ユーノであろうと小声で話す。 はやては、そんな面白い事があったのなら、なのはの後をついて行けば良かった…と冗談混じりに考えるが、 ディバインバスターにて吹き飛ばされるのは必至と考え身震いを起こし自分の考えを自重する。 そして戻って来れたら色々な意味で祝杯として、はやて直々に赤飯を炊こうと考えるのであった。 それから数時間、道なりに歩き目的の場所である空洞へと赴く一同。 空洞は広く天井も50mはあると思われる程に高く、地面には巨大な魔法陣が描かれており、資料と全く同じ作りをしていた。 「それじゃ、私は帰るわ、後はがんばって」 そう淡白にメルティーナは挨拶を交わすと、そそくさと地上へと戻って行く。 そして一同が残されると、先手をとってなのはが魔法陣に踏み込む。 それを皮切りに次々と魔法陣に踏み込みちょうど中央に集まると、 三角形が一ずつ光り出し、最後に円が輝き出すと周りは白い光に覆われ始める。 「いよいよやな!みんなぁ、気ぃ引き締めていくでぇ!!」 はやての掛け声に一同は気合いを込めて返事をすると扉が起動、 機動六課フォワード陣は光に包まれ、この世界から消え去り神が住まう世界、セラフィックゲートへと向かうのであった…… 前へ 目次へ 次へ
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1話 時を越えろ 空を駆けろ 第97管理外世界 地球 ゴルゴム神殿 今、仮面ライダーBLACK 南光太郎とゴルゴムとの決着が付こうとしていた。 「最後だ! 創世王!!」 BLACKが、サタンサーベルを創世王に向かって投合する。 投げられた剣は創世王のバリアを貫き創世王を串刺しにした。 「フグァッ・・・・、見事だブラックサンだがこれで終わったわけではない・・・・・」 「貴様をシャドームーンとともに異世界へ飛ばす!シャドームーンを倒し創世王になれば元の世界に戻ることも容易い・・・・」 「そうはさせんぞ! 創世王!!」 BLACKは阻止するため、ライダーキックを放つ。 「創世王を決める戦いは終わらん! さらばだ! ブラックサン!!」 BLACKの抵抗も虚しく創世王による移転は発動する。 「――ッ・・・創世王ォォォォォォオオ!!」 創世王が消滅するとともにゴルゴム神殿は崩壊する・・・・・ そして仮面ライダーBLACK、南光太郎とシャドームーン、秋月信彦はこの世界から消えた・・・・ ■■■ 「これは・・・ゴルゴムの仕業か?」 光太郎は空港の屋上で目覚めた。 だが、その空港は普通ではなく、火に包まれ地獄を連想されるものだった。 「おのれゴルゴム、罪の無い人々の幸せを引き裂くとは・・・・絶対に許さん!!」 t突如、光太郎の耳に助けを求める声が響く。 「――聞こえる・・・・助けを求める声が・・・・今もどこかで助けを求めている!」 少しでも早く、苦しんでいる人々を助けるために・・・・ 光太郎は精神を集中させ両拳を引き寄せ、強く握り締める。 「変―― 腰に拳をあて、左手を逆方向に伸ばし半円を描くように回転 ―――身! 掛け声と同時に両手を一気に右側へ振り切る! 瞬間、光とともにエネルギーが吹き荒れた! ―――その時、不思議なことが起こった――― キングストーンは瀕死の創世王の時空移転により傷つき キングストーンは光太郎の体から分離し、変身が不完全になってしまったのだ。 そして、その体はキングストーンの魔力によって構成される。 そして光太郎は,仮面ライダーBLACKに変身する、・・・はずだった 「この姿は・・・・BLACKの姿ではない・・・・」 その姿に仮面は無く、それはBLACKの格好を魔術師にしたようなものだった。 共通点といえばベルトと胸の世紀王のエンブレムぐらいだ。 姿は違うものの感覚は鋭くなり、体は軽い、熱も遮断したようでただの服ではないようだ。 「間に合ってくれ! トゥア!!」 どんな姿になろうが助けることができれば関係ない・・・・ 光太郎は救助に向かうため空港の屋根を拳で突き破り火の海に飛び込んでいった。 「だめだ!だめだ!こっちはだめだ!」 「この先にはまだ少女が・・・クソッ!」 数人の男たちが己の無力さを嘆く時、天井が崩れ瓦礫が崩れ轟音が響く。 黒いバリアジャケットを纏う青年、南光太郎だ。 その本人はバリアジャケットのことなど、知るよしもない。 「大丈夫ですか!?」 「管理局の魔術師か!こっちは大丈夫だ!それよりもこの先にまだ少女が取り残されているんだ!」 聞きなれない単語に光太郎は考える。 (管理局?魔術師?やはり僕は異世界に来てしまったのか?それにこの姿はいったい・・・・) 「頼むぞ・・・!」 「わかりました!」 光太郎は男の願いを聞き、火に突っ込んでいく。 「すごい・・・・火に飛び込んで・・・」 「・・・大丈夫そうだな、彼に任せてみよう。時期に彼女も来る」 女神像の傍で少女、スバル・ナカジマは泣いていた。 「こわいよう・・・・家に帰りたいよう」 火に取り残された少女は、泣いて、力なく助けを求めていた。 そんな少女に残酷にも、女神像の台座が砕け始めスバルに向けて崩れてきた。 「あ・・・・!」 時すでに遅し・・・・このままではスバルは女神像に押しつぶされてしまうだろう。 だが・・・! 「ライダーチョップ!!」 直径100mmの鉄棒を切断をも切断するライダーチョップが女神像を一刀両断していた。 切断された女神像は見事にスバルを押しつぶさず、その両脇へ倒れる。 「もう大丈夫だ・・・よかったな・・・ッ!」 光太郎は嬉しそうな表情でやさしく少女を両手で抱き上げた。 その時だった管理局魔術師、高町なのはが遅れて到着したのは・・・ 見たこともないBJを纏う光太郎になのはは声をかける。 「あなたは・・・・?」 突然の呼び声に光太郎は瞬時に振り向き叫ぶ。 「空を飛んでいる!貴様ゴルゴムかッ!?」 優しかった光太郎の表情は一瞬にして鬼の形相に変わる。 そのあまりの変化にスバルは小さく咽せてしまった。 南光太郎・・・人生最大の勘違いである。 「ゴ、ゴルゴ!?・・・ち、違います!私は時空管理局魔術師、高町なのはです!」 「管理局・・・!では貴方が!」 光太郎は先ほどの男たちから管理局や魔道士の言葉を聞き、なのはを味方と判断した。 「この子を頼みます!僕は次の救助へ向かいます!」 光太郎は勝手に一人合点したようで、なのはにスバルを預け、すさまじい跳躍で視界から消えていった。 あまりの速さになのは唖然とするばかりだった。 スバルの救助を終えたなのはは、さっきの青年を探しへいく。 そう思ったよりも時間はかからず青年は救急車の瓦礫に座り込んでいた。 沈んだ表情をしていて考え事をしているようだった。 なのはは青年へ近づき声をかける。 「救助お疲れ様」 青年ははっとした表情でこちらを向き、愛想よく微笑む。 「まだ名前聞いてなかったね、あなたは?」 「僕は南光太郎といいます。なのはさんでしたね?あの・・・管理局とは?」 「あなた・・・時空遭難者みたいだね」 「時空遭難者・・・そうだと思います」 「なら、管理局に来てくれないかな?もちろん悪いようにはしないし、いろいろ聞きたいこともあるから・・・・」 「わかりました・・・もう僕には行く場所はありませんから」 光太郎は考えていた。 (創世王が戦わせるために、この世界に送ったなら・・・信彦は・・・・信彦は生きている! 信彦、僕は諦めない・・・僕は運命を変えて見せる!) 異世界に来て戦友も、家族も、故郷までも失った光太郎にとって信彦は唯一の希望だった。 信彦を救う、そう決意すると光太郎はなのはについて行くのであった。 目次へ 次へ